最終章 感情の始まりと花姫?

第74話 秋の季節とある日

 文化祭から時間が過ぎていき、学校もいつもの落ち着きを取り戻していた。

 一つの場所を覗いて……。


「あぁぁぁ……」


 そして俺はそれが原因で教室の机で突っ伏して昼休みを過ごしている。


「あき、大丈夫?」

「ダメだ……」


 一つの場所とは、廊下にある掲示板である。

 文化祭の実行委員会がとった文化祭の写真の購入ができるわけだが、そのリストがさらされているのだ。

 そこには当たり前だが、ミスコンの写真だってのっている。


「最初の方は完全に目が死んでるけど、後半は吹っ切れてたわよね」

「あの時の俺の記憶は、すでにメモリーから消去された」

「あはは……」


 写真が貼られているのは今週一週間だ。

 だが、あの写真を全く関係なしの人間に買われる可能性を考えると困る。いや、隠し撮りとかされてるよりは全然いいんだけどね。

 どうせ、卒業アルバムに乗るのは、2年にして想像ついてるわけだし。


「智愛しっているか……」

「なにを?」

「あの時の俺の二つ名は『氷の薔薇姫』らしい。目が死んでる時はクール系お嬢様、吹っ切れた後も制服の雰囲気に飲み込まれた結果、薔薇姫とかいうイメージらしくてな」

「へ、へぇ……本人的にはどうなのよ?」

「非常に不本意である」


 ちなみに声は女性に聞こえるように男のキモい裏声ではない上で、俺が出せる一番安定した高音をだした結果、違和感がないという意見と多少違和感あるけどそれがむしろいいという意見で埋め尽くされたらしい。


「そ、そうだ! 秋、今日一緒にプレイしないかしら? 文化祭忙しかったからあんまりできてなかったし」

「……それもそうだな。久しぶりに一緒にやるか!」

「じゃあ放課後帰ったらすぐね」

「おっけいだ」


 智愛なりに俺のことを励ましてくれているんかな。その場合はなんとなく申し訳無さも感じてしまう。

 午後の授業も頑張ろうと背伸びした時に、机に肘をぶつけてシャーペンを地面に落としてしまった。

 すぐに俺は拾うが、視線が捉えてはいけないものを捉えてしまう。


 ――タイツだと。


 去年はクラスが違ったし、春にはつけてないひともいる。今日は秋といえども肌寒くて、防寒を多少してくる人も多い日だった。

 だけど、中学までのこいつを知っているゆえに、初めて知ったこの事実が大きすぎた。

 智愛がタイツを履いている。


「秋、大丈夫? 結構勢い良く肘ぶつけたけど」

「え? あ、あぁ、大丈夫だ」


 その健脚の持ち主が自分の幼馴染であることに罪悪感を覚えた。今まで普通に友達とか幼馴染だと思っていたのに、今年に入っただけで間接キスだの文化祭のあれだので変に意識してしまっている。

 なのにあろうことか俺は――タイツで覆われて少しぴっちりしていた智愛の脚にたいして、なにか言い知れぬ感情を持ってしまった。

 ものすごい申し訳ないというか、いけない事をしている気分だ。

 あと、細すぎるよりかは健脚の方が俺は好きだとはじめて自覚できた瞬間だった。

 肘の痛みなんてものは完全に吹き飛んでしまっていたわけだ。


「それよりほら、もう午後の授業はじまるから席戻っておいたほうがいいと思うぞ」

「え? あ、ほんとだ。じゃ、またね。あき」

「お、おう」


 俺が智愛に持ってるこの感情って何なんだろうな。

 いや、もしかすればわかっているかもしれないけど、それを一度として経験したことがないから確信が持てないということもあり得る。


 ひとまずは、もう少し様子を見ることにしよう。

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