第52話 夜の番3

 夕飯を終えて、スクショやらなにやらろくでもない事しかしない状態になっているリーフと調子が悪そうなティアをテントに入れて、今日の夜の見張りが始まった。


「おつかれさまです」

「あぁ……ありがと」


 さすがにこれだけの日数一緒になっていると、色々と感覚が麻痺してきそうだ。修学旅行でもこんなに一緒には泊まらない。


「リーフはテンション上がってやばいわ、ティアもなんか調子悪いわ……あと4日大丈夫か?」

「もう3日たったんですね」

「まあ、初日含めてだけどな……奇跡的に他のグループとかちあうことがないってところか。ティアは遺跡であったっていうし、いることはいるはずなんだろうけどさ」

「そろそろイベントが起きてもおかしくなさそうですね」

「まあ、それはたしかに……掲示板見てると料理関係と消耗品関係の需要がすごいことになってるみたいだからな」


 夜は作業をやりつつ掲示板を確認するようにしている。今日確認した結果がそれだ。どうやら、遺跡やダンジョンなどの攻略が深みに達してレベルも上がってきているらしい。


「それなら、こっちも用意しておきましょう」

「俺たちの分はできたんだろ?」

「でも、需要があるなら作っておいて損はないと思いますから。それに夜はやることがありませんしね」

「……それもそうだな」


 ミドリは今日も道中で薬草類を取るだけ取ってきたらしい。メインで採取したわけじゃないからこの量なら2人でやれば交代時間までに終わるだろうな。


「しかし、ティアかアキさんは水難の相でも出ていそうですね」

「いきなりなんだよ」


 ポーションを作りつつそんな話をミドリがしてくる。


「だって、ティアにききましたよ。前にどこかの遺跡行ったときもびしょ濡れになったって」

「あいつ……まあ、たしかにティアと一緒に行動した時は水関係のなんか起きやすいかもだけど、あくまでゲーム内だぞ」

「そうですか? 前に学校でもありませんでしたっけ?」

「学校で……」


 少し思い出してみる。

 そういえば今年の梅雨の時期になんかあったような。


「ほら、ティアとアキさんが一緒に学校に駆け込んできた日ですよ」

「あぁ~。そういえばそんなこともあったな」


 たしか朝は晴れてて天気予報でもその日はふらないといって油断していたら、振られたんだったかな。折り畳み傘あるって言ってるのに、走ったほうが早いって智愛が行ってしまったのを追いかけてふたりともずぶ濡れになった。


「あれは俺は悪くない!」

「いえ、そうじゃなくてその後のアキさんの反応をいまだに覚えてまして」

「俺なんか変な反応したっけ?」

「ほら、ティアの方見て」


 さらに思い出してみるとあの日の光景が浮かんできた――濡れて夏服だったYシャツが透けて中の下着が……。


「ぁぁ……そ、そういえば、そんなこともあったにゃぁ」

「顔赤くなってますよ」

「話すのは良くても、スキンシップとかああゆうのはダメなんだって知ってるだろ」

「はい、知ってます。ゲーム内でも正直、着替える時赤くなってるのが想像できます」

「いや、だってキャラの作り直しあのときは時間かかると思ったし……そういえば、未だにできるのか確認してねえな」

「一応、データを削除すればできるらしいですよ。現状、データそのままでは無理みたいです。そもそも性別誤認なんて想定してないと思いますし」

「運営に言わない限り直されはしないってことか……はぁ」

「まあ、これを機会に女の子に耐性つけていきましょう。うちの学校ただでさえ、アキさんよく抱きつかれますし」


 そうなのだ。何故か俺は抱きつかれることがしょっちゅうなのだ。


「あれ、なんでなんだ?」

「女子曰く、身長がちょうどいいと」

「くそぉっ!」


 この夜はその後も何故かミドリにいじられっぱなしでポーションを作っていくことになってしまった。

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