第51話 着替えと修復
俺が水に引きずり込まれる事件があってから数時間が立って、残りの2人も帰ってきた。
「……一体何があったの?」
まず俺をみたリーフの第一声がそれだった。水は乾いたものの、結構なダメージを受けていた。
「あぁ、そういえば、耐水性つけてなかったもんね! うん! 直してあげるから脱いで!」
「ちょっと、まってくれ」
「人前で脱ぐのはゲームでもダメ?」
「それも嫌だけど、これみてなんの質問もなしかよ」
「あたし的には何があったとしても大丈夫だよ。受け入れるから」
「何言ってんだ……」
「じゃあ、わたしが代わりに。何があったんですか?」
ミドリが荷物をおいてきて聞いてくれる。
「いや、まあ釣り竿で釣りしてたらそこの湖に引きずり込まれた」
「魚いたんですね……でも、引きずり込まれるってどんだけ大物の」
「いや、モンスターだったからスキルレベルが足りなくてな」
「そっちですか」
「そっちだ」
「それで、ティアはティアでなんで一心不乱に金属叩いてるの」
「それは俺にもよくわからん」
「まあ、どちらにせよその服は直してもらったほうがいいですよ。ここは見てますので行ってきてください」
「お、おう……」
「じゃあ、レッツゴー!」
そういってリーフに近くの森のなかに引っ張り連れて行かれることになった。
「さぁ、アキちゃん脱ごうね~」
「まて、自分で脱げるから。はごうとするな!」
「……なんでアキちゃん男の子なのに女子の服に詳しいの~……」
ひとまずジャケットを脱いで渡す。
「あぁ~……他のも全部やっちゃったほうがいいかもね。素材は実はここ数日で耐水用のはあつまってるから。ほら、全部脱いで」
「着るものがなくなるわ! ただでさえ自分ですら目に毒なのに下着で過ごせってか!?」
「あぁ……じゃあ、はいこれきて」
言われるがままに来ていたアバターを脱いで渡して、代わりのアバターを装備する――肩がでていて白を貴重としたデザイン。そして膝の少し上ほどまであるスカートって。
「これ、この前の夜作ってたワンピースじゃん!」
「いやぁ、サイズあいそうなのそれしかなくて」
「なんて、数日前に作ったやつが俺のサイズにあってるんだよ!」
「アキちゃん女子に近いし? 平均的というかなんというか。まあ、それ以外ないし似合ってるから我慢して!」
「くぅ……」
これ以外ないんじゃ文句言っても何も解決しないし仕方ない。
でも、スカートのスースーする感じがとにかく苦手だ。
仕方なく着替え終わってキャンプに戻ると、俺を見ての第一声がこれだ。
「お似合いですね。清潔感があっていいと思います」
「はぁ……はぁ……疲れた。でも落ち着いたわ。アキ、大丈夫……」
「な、なんだよ」
「いや、なんか……ごめん」
ティアが発言にこまっていたたまれない空気になってしまった。
「もういい! 飯作るから素材よこせ!」
「今日はこんな感じの収穫でした」
海の貝が少しと、モンスターからドロップしたという味噌を手渡された。そして、モンスターの肉が少しばかり。
「味噌汁が作れるな……リーフはなんかとれたか?」
「はい」
「おう……うん、これなら汚れない! ってなんでだ!」
リーフから渡されたアバターを装備してすぐにそうツッコミを入れざるを得なかった。
たしかに白いワンピースだから汚れ目立つかもしれないけど、なんでエプロンまで用意してあるんだよ。
「なんか、ここ数日料理してるアキちゃんみてインスピレーションがわいちゃって」
「アキは現実でも料理うまいからね~」
「そうなの?」
「たまに女子力で負けた気持ちになるわよ」
一回料理がうますぎると逆ギレされたことを思い出してしまった。
俺は心を無にして夕飯作りを開始することにした。なんか後ろからスクショの音が度々聞こえた気がするから、あとで問い詰めることにしよう。
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