第29話 武器と告知
次の日からまた学校が始まる。
いつも通りに朝登校してクラスまでの道を歩いている途中のことだ。
「お、おはおは、おはようございます」
ものすごい緊張しながら葉月に挨拶された。
「お、おはよう」
こっちにも少し緊張がうつってしまう。
そして、俺が挨拶を返すと逃げるようにクラスの方へ行ってしまった。
……転校したばっかりって行っていたし、人見知りとか改善しようとしてるのかな。
それなら何か協力できればいいんだけど。
その夜。
いつものようにゲームにログインした俺はティアの露店へとやってきていた。
「よっす」
「あら、珍しいわね。いらっしゃい」
「珍しいって」
「だって、約束してない時に店来ることあんまりないじゃない。ミドリの所はよく行くみたいだけど」
「……それはたしかにそうだな。えっと、まあ第2拠点までいけるようになったからさ。装備整えたくて」
「ほうほう。話を聞くわよ」
今日ここにきたのは他でもない、とうとう武器制作に踏み切ろうと思ったからだ。
「まあ、【槍】が30レベルを過ぎて派生が起きたから、作ってもいいかなと思ったんだが……ぶっちゃけどういうのがあるか知らないんだよ」
「ちなみに種類は?」
「【長槍】だ」
「そうなると、突き特化なのか、それなりに幅を持たせるかで変わるわよ」
そう言うと、ティアは2つの槍を取り出してくる。
どちらも両手で持つ長槍だが、穂先が小さな剣のようになっているか、完全に突き特化と言わんばかりの形になっているかだ。
「見た目でわかる?」
「まあ、なんとなくは」
「どっちがいいかによるわね」
「突きばっかやってるけど、正直、初期のスピアって武器がこの突き専用みたいな形じゃん?」
「そうね。ランスとかに近い形だったわね」
「でも結構俺、持ち手とか石突でぶん殴ることもあるから、剣としても使えるならそれに越したことはない機がする……使ったことないから、なんとも言えないけど」
「そうね……でも、まあたしかにそうだと思うわよ。突き特化でやるなら変な使い方せずに、突き攻撃極めたほうが強いとは思うし。それならこっちの形にする?」
「それで頼む」
「それじゃあ、次に素材なにか使いたいってものはあったりする? あと使えそうな物」
「鉱石類ならお前と一緒にいって、結局使いみちわからずアイテム圧迫してた奴らが」
「それ渡しなさい」
妙に溜まってた鉱石類を全部渡す。だしてみると、自分でも思ってた以上の量だった。
「これだけあれば十分作れるわね。あと、モンスター素材とかで特殊効果とかもつけられるけど、なにかある?」
「レアドロとか取れるものの、全部装飾品とかアバター用だった」
「そっか。じゃあ、普通に作るわね……まあ、また明日来て。今は依頼立て込んでないからできてると思うわ」
「そうか。それじゃあ、よろしく……って、金はどうすればいい」
「この素材全部使うわけじゃないから、使ってないぶん買い取りってことで、足りない分は明日請求させてもらうわ」
「まぁ、【鍛冶】とか取る予定ないからそれでいいならありがたいけど」
「今の時点での最高のものにしてあげるから楽しみにしてなさい」
防具は一応できてるし、装飾品と武器も頼み終わった。あとは、感性を待つだけだな。
「――って感じでな」
「それで、うちにポーション売りに来たと。需要と供給は最初よりかは減ったけど、まだまだ売れるからかまわないですけど」
「いつもすまん」
「もう、アキさんも自分で店持てばいいのに」
「今は金ないしな。あと自分で冒険にも行きたい」
「NPCとか雇えるようになれば問題ないと思いますよー」
「そういうこともできるのか……」
「ま、あくまで一つの方針ですけどね」
「考えておくよ」
「それがいいかと……今日は、この後の予定はあるんですか?」
「待つだけだから特にないな」
「それなら、久しぶりにわたしと一緒に薬草摘みでもしに行きませんか。最近、なんだかんだ商売の話しかしてなかった気がするので」
「そういえば、そうか。いいよ、行こう」
「では、早速」
ミドリが準備を始める。すると、センターシティのみならずゲーム全体に響き渡るようなアナウンスがなり始めた。
『初めましての方がほとんどですね。いつもOAOをお楽しみ頂き誠にありがとうございます。開発会社でありこのゲームのプロデューサーの河野忠ともうします。突然のアナウンスにて失礼致します。この度、今月末に第1回目の大型アップデートの実施を発表いたします。様々な要素の追加や、フィールドや難易度アイテムなどの修正や追加等を行います。詳しくは、公式HPもしくはSNSアカウントなどで情報を確認ください。それでは、ひきつづきゲームをお楽しみください』
大型アップデートによる様々な追加要素か。
「楽しみですね。準備終わりましたよ」
「お、そんじゃ行くか」
「しかし、見た目は女の子同士ですがデートみたいですねこれ」
「ゲームはカウントに入らないと俺は思っている」
「なんですかそれ、リアルのわたしとデートはごめんだと」
「そういう間柄じゃないだろ……何が追加されるんだろうな」
「ひとまずアイテム関連の修正とレシピが増えてほしいですね」
「また覚えることとかが増えそうだ」
夜の星が広がるOAOの世界の中で、あるきながらそんな話をする。
次の冒険のための準備が済んだら、新たな冒険を探していきたい。ふと、俺はそう思う。
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