第13話 閑話なのです

「神奈、一緒にお風呂に入りますよ」


 食事も終わり、まったりとしていた所。

 食器を洗い終わって戻ってきた奏が、神奈に対してそう提案をしていた。


 神奈は一人で風呂に入る事が出来ないので、毎回奏が付き添っている。


「どうしてもか?渉とじゃ駄目か?」

「駄目です。神奈も女の子なのですから、年頃の兄さんとお風呂に入ろうとしないでください。襲われますよ」

「一回も二回も変わらないと思うんがな……」


 神奈は少しだるそうにしながら、のっそりと立ち上がる。


 神奈はあまり奏と入る事をよろしく思っていない。


 その理由は、奏と入ると疲れるからという単純明快なものだ。


 奏は世話焼きなのだが、神奈にとってはそれが嬉しくないらしい。

 さっぱりした性格の神奈にとって、奏みたいな世話焼きは…敵なのかもしれない。


 というか奏よ、俺はこんな小学生みたいなやつを襲うほどロリコンじゃないぞ。

 一体兄をどんな目で俺を見ているんだ。


「リアも一緒に入りますか?」


 俺の向かいにいるリアにも誘いをかける奏。

 しかし、リアは双剣の手入れをしており、今は手が離せない状況だ。


「二人で入ってて。私はこれやらないといけない」

「分かりました。また今度入りましょうね」


 邪魔しては悪いと思ったのか、奏は思った以上にあっさりと身を引いて風呂に向かって行った。


 奏は意地でもリアと共に入ると思っていただけに、少し拍子抜けだ。


「毎日そうやって研いでるのか?」


 しゃこしゃこと双剣を研ぐリアに問いかける。


「毎日はやらない。やり過ぎると刃が駄目になる」

「そうか、刃を削っているからやり過ぎると使い物にならなくなるんだな。じゃあどれぐらいの期間でやるんだ?」

「んー……適当?刃を見てしたい時にしてる。特に期間は決めてない」

「臨機応変にってことか。大事にしてるんだな」

「命を預けるものだから。道具が使えないと、それだけで死んじゃう可能性がある。だから、使う物はちゃんと手入れする」

「俺も銃の分解清掃オーバーホールを神奈に教えて貰わないといけないな」


 リアの言う通り、実践でいきなり弾詰まりジャムったりしたら話にならない。


 魔物討伐に散々使う事になるだろうから、知っておかないとすぐに使い物にならなくなってしまうだろう。


「渉の使ってた武器凄かった。でも、あれじゃ魔物は討伐出来ないよ?」


 そういえばリアとの決闘で使ったのは模擬プラスチック弾だったな。

 あれが本来の威力だと思っているのだろう。


「決闘の時に使ったのは訓練用のものだ。本物は薄い鉄なら貫通するぐらいの威力があるし、多分問題ないと思うぞ」

「あの時の言葉、あれって本当だったの?」


 あの時の言葉と言うと、刃を潰した木刀と例えたやつだろう。

 リアはあれを挑発と受け取っていただけで、本気だと受け取っていなかったみたいだ。


「明日を楽しみにしているといい。多分、度肝を抜かれるぞ」


 本来の銃の威力は模擬弾の比じゃない。

 銃の威力を知らないリアが見たら、きっと驚くだろう。


 明日の楽しみがまた一つ増えたな。



 そんな感じでリアと雑談していると、風呂からあがってきた奏と神奈がリビングに戻ってきた。


 神奈は少し疲れたように俺の隣に倒れ込む。

 奏の相手をして疲れたのだろう。

 これもいつもの光景だ。


「兄さん、上がりましたのでどうぞ。ミアは後で入るそうです」

「分かった。じゃあ俺も風呂に入るか」

「いってらっしゃい」


 リアと奏に見送られつつ、俺は風呂に向かうのだった。

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