第13話 魔物は思ってたより、おいしかったです。
「おまたせしました!パンとスープ三人前にデットラビットのステーキ、ブラックフィッシュの香草焼き二人前です!」
俺と奏が貴族disを続けていると、ルゥが注文の品が目の前に運ばれてきた。
見た目普通のステーキに見た目普通の魚の香草焼きなのだが、彼女の言った言葉に俺は少し気を引かれた。
「デットラビットにブラックフィッシュ?」
初めて聞く名前だが、物凄く禍々しいように思う。
「今朝入荷したばかりの新鮮な魔物のお肉にお魚です!どちらも美味しいですよ!」
「ほう……」
「これが魔物の魚ですか……」
俺と奏は調理後とはいえ、初めて見る魔物をじっくりと見つめる。
日本はアトランティスから遠く離れていたためか魔物による被害が少なく、俺達は一度も魔物というものを見た事がない。
馬車でこのアクロポリスまで移動した際も、護衛が優秀だったのか魔物とは一度も遭遇していないのだ。
なので、俺達はこれで初めて魔物を見たという事になる。
「ブラックフィッシュは普通の魚なのですが、デットラビットはその名の通り、人を死に追いやる非常に恐ろしい魔物です。デットラビットには角があり、その角には強い毒性が含まれています。非常に素早く、群れる事も多い魔物ですので、冒険者ギルドでも手を焼く面倒な魔物ですね」
「魔物の説明はありがたいがそれよりさらに気になる事が出来た冒険者ギルドについて詳しく聞かせてくれ!」
興奮を抑えきれず、俺は身を乗り出しながらミアに対して質問する。
ギルドと言えばさまざまなクエストを取り仕切り、時に自由気ままに、時に国の為に戦う、物語における重要な施設の一つだ。
魔物というものが存在しているというから、もしやとギルドがあるのではないかと疑っていたが、まさか本当に在るとは思わなかった。
「あの、盛り上がってるところ悪いのですが、お代の方頂きたいのです……」
ミアに話を聞こうとしているところに、ルゥがそんなことを口にする。
日本では珍しいが、どうやら会計は後払いで無く、その場で支払うパターンのようだ。
「申し訳ありません。こちらで足りるでしょうか?」
ミアが銀色の硬貨をルゥに対して渡すと、ルゥは懐から銅色の硬貨を相当量ミアに対して差し出した。
「銅貨六枚ですのでお返し二十四枚です!では、ごゆっくりどうぞ!」
そう言うと、ルゥは元気よくカウンターの内側へと走り去っていった。
最初から最後まで元気のいい猫耳ウェイトレスだったな。
「では食べながらにはなりますが、冒険者ギルドに関して説明させていただきます」
「頼む」
ルゥのおかげで少し落ち着いたので、ミアの話しに耳を傾けつつデットラビットのステーキに口をつける。
お、魔物の肉って聞いてどうかと思っていたが、意外とくせがなくて食べやすいな。
「冒険者ギルドとは、冒険者を取りまとめる一つの組織になります。冒険者ギルドでは
ミアは、冒険者ギルドについてそのように説明した。
ミアの説明する冒険者ギルドと、俺の考えていた冒険者ギルドにはほとんど差異はないように思う。
ランク付けは適正に依頼を受けさせるもので、難易度が高ければ高いほど報酬も高い。
依頼が一般人にも出せるのか気になるところはあるが、そのあたりは行って見れば分かるだろう。
「冒険者ギルドに並び、治癒ギルドというものもあります。治癒ギルドはその名の通り、治癒士専門のギルドです。こちらは誰でも登録する事が出来るわけではなく、回復適正を持っている人しか登録する事が出来ません。こちらも同じくランクと依頼がありますが、その多くが治癒に特化したものになっています」
追加でミアが説明したが、どうやら冒険者ギルドのほかに治癒ギルドなるものがあるらしい。
こちらは全く想像していなかったが、冒険者ギルドが何でも屋なら治癒ギルドは回復屋といったところだろう。
適正が少ない分、纏めて管理した方が効率的に回せるのだろう。
補助適正も数少ないが、こちらは不遇適正らしいので治癒ギルドのように独立してないんだろうなと思うと少し物悲しくなる。
「私が知っているギルドに関してはこの程度です。お役に立てたでしょうか」
「ああ、知りたかった事は十分わかった。ありがとな」
誰でも冒険者になれると言う事は、俺でも冒険者になれるという事だ。
回復適正を持つ奏は、治癒ギルドに行った方が成長するだろう。
ギルドは兄妹で分かれる事になりそうだ。
「お二人に一つお願いがあります」
「ん?なんだ?」
ミアが真剣な眼差しを俺達に向けていたので、俺も食事の手を止めミアの方を見る。
「貴族がわざわざギルドに加入する事はありえません。貴族と庶民は水と油。ギルドは特にその傾向が強く出ます。お二人も、ギルドへの加入など考えないようお願いします」
「奏、その魚一口くれないか?」
「良いですが、そちらのステーキと交換ですよ」
「持ってけドロボー」
「だから!私の話を聞いてください!!」
このやり取りも定番化してきたなと思いつつ、俺達は料理に舌づつみを打った。
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