第42話 俺と「あの方」2

俺が、とある国のスタート地点で緩く生活をしている頃、他の冒険者たちは、ついに魔王のいる魔界の入り口にたどり着こうとしていた。それを「あの方」が、地獄の炎で迎撃する。


「忌々しい人間どもめ! 私が焼き殺してくれるわ! おっほほほほほ!」


この人間嫌いで、残酷で高笑いをするのが、「あの方」である。


「怖い・・・。」


このビビっているのが、小悪魔のデビちゃんこと、スモールデビルのスーデビである。デビちゃんは、「あの方」の使い魔として、こき使われていたのだ。


「スーデビ。」

「はい!?」


デビちゃんは、名前を呼ばれただけでも、ビビってしまう。


「人間界に行って、勇者どもを皆殺しにするわよ!」

「キャア!? 怖いです!?」

「行くわよ! スーデビ!」

「は、はい!?」


「あの方」は、ほうきに乗り、デビちゃんを連れて、魔界の最下層にある魔王の城から出てくる。



その頃、人間界では、勇者さまご一行が、魔界を目指していた。


「もう少しで、魔界の入り口だ。」

「みんな! がんばろうぜ!」

「おお!」


ここまで来た冒険者たちは、レベル20前後の強者になっていた。普通のモンスターであれば、人間どもでも、回復しながら、魔界の侵入することができただろう。相手が「あの方」でなければ・・・。


「あれが人間どもか・・・なんと醜い!」

「そうですね。」

「あんなゴミどもが、魔界に攻め込もうなどと、汚らわしい!」

「魔界は、汚れていますよ?」

「スーデビ、おまえに火をつけて、投げ込んでやってもいいんだぞ?」

「お許しください!? 口にチャックをしときます!?」


「あの方」に、口答えすることは、許されないのだ。話を進めたいので「あの方」のジョブ・職業を探す。リッチ・ソーサラー・ワイズマン・リッチは、パッとしない。ダークプリーストは、パクリっぽい。ということで、ダークプリンセスにしてしまおう。


「私が、人間なんて、下等生物を滅ぼしてくれるわ! おっほほほほほ!」

「・・・。」


「あの方」は、確実に人間を滅ぼすだろう。笑い声と共に、両手の手の平に、地獄の炎を闇の魔法陣なしで、呼び出す。それだけ「あの方」の魔法力が強い。デビちゃんは、怒りに触れたくないので、沈黙を貫いている。


「人間なんか! 消えてなくなれ! 地獄の火炎!」


「あの方」は、地獄の炎を人間界に解き放った。まず、ここまでやってきた冒険者さまご一行を一瞬で焼き殺した。


「燃えろ! 燃えろ! 燃えろ!」


その炎は、どこまでも広がり、近隣の町や村、山も海も、全てを焼き尽くした。周辺の人間は、全滅した。いつまでも炎は消えず、魔界の入り口は、炎に耐性がないと入るのは難しくなった。


「私を怒らせるから、こうなるのよ! おっほほほほほ!」

「・・・。」


これが「あの方」の実力である。「あの方」の前では、人間なんて、ゴミに等しかった。魔界の入り口の周辺は、地獄の炎の海が出来上がってしまった。小悪魔のデビちゃんは、「あの方」に反抗するのは、改めて止めようと思った。


「これで、勇者は全滅ね。魔界に攻めてこようなんて、1億年早いのよ! おっほほほほほ!」


「あの方」は、上機嫌で笑っている。


「まだ1人だけ、勇者が生き残っていますよ? はぁ!? つい口が!?」


デビちゃんは、両手で口を塞ぐが、言ってしまった言葉は消えることはない。後悔しても元には戻らなかった。「あの方」に、1人だけ勇者が残っていると伝えてしまった。小悪魔だけに、デビちゃんは、小悪魔のささやきが得意で、ついつい口が滑らかに動いてしまった。


「なに!?」

「ヒイイ!?」


「あの方」は、ギロっと小悪魔のデビちゃんを見る。デビちゃんは、蛇に睨まれた蛙状態で、ブルブル震えていた。


「まだ、魔界に攻めてこようという、生意気な人間がいるのか!? 許せん!」

「ヒイイ!?」

「その、残り1人の勇者はどこにいる!? スーデビ! そいつの所に案内しろ! すぐに殺しに行くぞ!」

「ヒイイ!?」


「あの方」は、残り1人の勇者を殺しに、ほうきに乗って出発する。デビちゃんは、「あの方」が怖過ぎて、まともに会話もできないのであった。


つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る