第64話「渚より」

 真夜中の図書館。


 非常事態である都市の片隅にある国立なのだろう立派な白亜の建造物は少なくとも大規模な半埋設型の施設であるらしい。


 中心街から少し離れた小高い山の中腹にあるせいで探すのには手間取らなかった。


 途中、道の先。


 中心街の方から散発的に砲撃と銃撃らしい音が響いてきているが、今はどうする事も出来ない。


 戦力は分散させずに固まって運用されているらしく。

 息を潜めた市街地には歩兵の姿も無かった。

 海軍局から山肌の道路まで小走りで駆けて20分。

 それから息を整えるのに2分。

 再びランニング程の早さで人気の無い道を昇っていく事4分。

 ようやく施設が真直で視認出来るところまで来ていた。

 辺りを見回すものの。

 西部歩兵の姿は無い。

 また、歩哨一人立っていない。


 どうやら緊急事態で警務省とやらもこんな場所に人を送ってくる余力は無いらしい。


 敷地を囲む塀は高く。


 正面のゲートは閉ざされていたが、脇の小門は僅かに空いていた。


 職員などが逃げる時に使ったのだろうか。

 周囲を警戒しながら、足音を立てずに進む。


「………」


 何か肉体だけではなく精神にも変化が訪れている。

 それが強く意識された。


 自分はそもそもゲーマーであって、あんな曲芸的な戦闘行動が出来る度胸も無ければ、武器の取り扱いが出来るような人間でも無い。


 しかし、実際に人を殺してしまっている。

 その上でまったく感情に揺らぎが生じていない。

 気の弱いゲーマーには有り得ない精神状態と言っていい。

 ならば、その異常に回答する術は一つ。

 あの皮袋のせいだろう。

 妄想では無かったのだ。

 少なくとも自分に見えていた。

 異常な色彩の世界の只中でまともな色を保持していた。

 それが鍵となっている。


 袋の中に何が入っていたのかは知らないが、もしもそれが人間の精神や肉体に影響を及ぼすような代物であったならば、技術的な知識を得られるものであったならば、納得は出来る。


 御主様。


 オリーブ教の開祖、蒼き隻眼の男に託された。

 そう……たぶんは託されたものが自分の中にある。

 それが救ってくれたと解釈するべきかもしれない。

 だが、今の状態がいつ切れるかも分からない。


 人間をザッと十人以上サックリ銃弾で殺してしまったのであるから、元に戻ったらかなり精神を病みそうだ。


 そんなダウナー系な罰ゲームで下種な男達の為に凹んでいる暇なんて今は無いし、状況が許してもくれないだろう。


 見たところ。

 人の気配はまるで無い。

 となれば、海賊団の誰も此処には到達していない。


 未だ都市に響く砲撃と銃声の音が途切れる前には何とか情報を得たいところだった。


(正面玄関は……開いてるか?)


 半開きな正面玄関の扉が見える。

 だが、素直に突っ込んでいくのは躊躇われた。


 銃弾三発にベラリオーネを庇った際の手榴弾の鉄片、それから硝子片と身体は傷のオンパレード。


 もう治っているとはいえ。


 それでも再びの激痛に身動きが取れなくなれば、その合間に殺されかねない。


 仕掛け爆弾なんてあった日には千切れる身体を押して情報を収集しなければならないのだ。


 そんなのはやってられないし、やりたくもない。

 よくよく見れば、正面玄関から少し遠い場所にある窓が開いていた。

 如何にも怪しいが真正面から入るよりはマシだろう。

 目と耳を研ぎ澄ましながら、窓枠に足を掛けて内部にザッと転がり込む。

 途端だった。

 ツルンと床に撒かれていた何かが床で滑ってベシャリと倒れ込む。


「そりゃぁあああああ!!!」


 何やら聞き覚えのある声。


 バサッと上からパラパラと細かい粉塵みたいなものが降ってきた。


 それは月明かりの下でもかなり白い粉だ。


「オイ!! 貴様!! 今から洗いざらい質問に答えろ!! もし、答えないのならば、貴様の身体は粉塗れになって明日の朝には海の上に浮かんでいるぞ? 無論、無残に苦しみながらのたうち回り、死ぬ間際まで絶望と激痛に支配されていたいのなら、止めはしないがな。くくく」


「……何やってんだ? お嬢様」

「ぬ?! まさか、その声はエニシか?!!」

「え!!? カシゲェニシ様?!」


 何とか壁に寄り掛かって立ち上がり、そのヌルヌルした独特の香りがする香油。


 オリーブ油塗れな身体をちょっと揺すって粉を落とす。


「エニシ!!? 無事だったのか?! というか!? 何故、貴様が此処にいる!!?」


「それはこっちの台詞なんだが?」


 暗がりから出てきた美少女。


 オールイースト家のお嬢様フラムとその巨乳メイドたるリュティさんが何やら驚いた顔でこちらを見ていた。


「そのボロボロな水夫姿?! どうなされたのですか!? は!? まさか、この国の連中に奴隷のようにこき使われて、重労働を!!? このリュティ!! 涙で前が見えま―――」


「貴様、また何か巻き込まれたのか? この状況で此処に来るというのはどういう了見なんだ?」


「色々とあったんだが、それはこっちの用事を済ませながら聞かせる。調べるの手伝ってくれ」


「む……それは我々の今の任務を知った上での話か?」


「そっちはもう情報を手に入れた。探しがてら聞かせてやるから、まずはこの図書館の一番奥に行くぞ」


「分かった……無駄な情報だったら、後で殴るからな」


 いつもの外套姿に貞淑なメイド姿の二人組みがボッとランタンに火を灯して、こっちに近付いてくる。


「この油と粉でベチョベチョなオレを殴りたいと思うなら好きにしろ」


「く、無念」


 一瞬で触るのを諦めたフラムの変わらない様子に思わず苦笑が零れた。


 それから大きな図書館の奥へと向う道すがら館内を確認しつつ、今までの話を聞かせる。


 エービットの言う通りなら、地下の蔵書に目的の情報はあるらしい。


 地下への入り口を見付けて内部に入ると月明かりが届かなくなってランタンのみが光源となった。


 慎重に事前準備の段階で聞かされていた話を頼りに書架を当たっていく。


「つまり、何か? 今回の戦争は西部がこの国を乗っ取り、遺跡の力を手に入れる為に連合を操っていたに過ぎないと?」


「そういう事だ」


「……ふむ。海賊の戯言にしては確かに辻褄は合うな。それにしてもセンスイ艦なんて兵器があるのか……我らが海軍にも欲しいな」


「それで質問なんだが」

「何だ?」


「お前、今回の任務に当たって首都に直通で繋がる電信の送受信機みたいなの持ってないか?」


「何故知っている?!」

「やっぱりあるのか」


「く?! まさか、この私がエニシの誘導尋問に引っ掛かっただと?! 卑怯だぞ!?」


「いや、とにかくもしそういう連絡手段があるなら、ちょっと貸してくれないか?」


「……何に使う気だ?」


「ちょっと、お前の上司に今の共和国艦隊を数倍の規模に増強出来る提案をしようと思って」


「む? それは本当か?」


「ああ、本当だ。上手く行けば、共和国は西部にも匹敵する大艦隊を整備出来る」


「どうせ、裏があるんだろう?」

「分かってるじゃないか」


「言っておくがな。エニシ……お前、ベアトリックス様をあまり舐めるなよ。あの方は共和国の軍神……本来はあのように軽く接していいお方ではない」


「舐めてない。お互いにとって暴力以外で片の付く有益な提案をしてるだけだ。そして、暴力以外での話し合いの場で一番ものを言うのは信用だ。それをお前の上司はよく分かってる。今のところ、オレに対して暴力を使う理由が無い。信用による話し合いで利益が引き出せるなら、それを取るだろう。少しの手間と大きな利益。合理主義ってのも結局は信用、人間の心の問題だ。長期的に見た場合、暴力以外で利を得る方が得するってパターンは多い。逆に暴力でしか解決出来ない事はあの人もそうするだろうしな」


「……いいだろう。貴様は前回の一件での功もある。もしも本当にその提案が我が国にとって有用だった場合、連絡させないのも損失だろうからな。手伝ってやる。ただし!!」


「分かってる。少なくともお前の軍歴に傷は付けないよう努力する」


「フン!! 当たり前だ!! それと少しは私に感謝しろ!!」


「勿論してるさ。リュティさんの料理が食べられないと毎日の生活に張りが出ないからな」


「まぁ♪ カシゲェニシ様ったらお上手ですね♪」

「何か今、私の事がサラッと流されていなかったか?」

「気のせいだ。っと、此処だな」


 リュティさんの持つランタンに照らされて、ようやく地下三階に降り立つ。


 その入り口には鎖で封鎖され、許可の無い者の出入りを禁ずるとあった。


 それを跨いで入ると古びれた古書の匂いが鼻を付く。


「この黴臭い本棚に聖なる入り江に関する本があるのか?」


「ああ、この書架だけは大昔からあった図書館跡のものを引き継いでいるらしい。上に立っている立派な建物は此処を保護する為に立てられたとか何とか」


 石製の書架はゴツゴツとした岩肌を曝していて、今までツルツルだった壁や床は打って変わって荒く石を削って出来たような出来だった。


「ふむ。何かの史跡のようにも見えるな」


「書架内の本は一端整理されたらしいが、元の位置に戻されて保管されてるとエービットは言っていた。だから、書架の番号さえ分かっていれば、本を見つけるのは簡単なはずだ」


 歩き出して事前に聞かされていた番号の書架の前まで来る。

 そして、古びれた皮製らしい装丁の本を見つける。


「【海域時報かいいきじほう】……これだな。海賊連中の関係者は政府系機関のあらゆる場所で不便を強いられてたせいで此処まで辿り着けなかったらしい。こいつの中で特定の時期の生贄の項目にたぶんは目的地が載ってるって話だったが……」


 指定された時代の船乗り達の様々な情報を纏めた本は生贄の事に付いて頻度こそ低いが確かに記述があった。


 パラパラと捲りながら、目的の時代を探し当てて、内部の生贄という言葉を捜す。


 すると、聖なる入り江に関する記述が目に止まった。

 字が掠れ気味だっただが、何とか読める。

 それを要約すれば、こうだ。

 今年から生贄を出す場所が変わった。

 聖なる入り江は―――。


「………」

「オイ。どうした?」

「探してた記述は見つけた。だが、変なんだ」

「変?」

「聖なる入り江は……もう存在しないと書いてある」

「はぁ? どういう事だ?!」


「分からないが、備考として生贄を捧げる際の変更点に必ず、この図書館があった場所で事前の儀式を行うようにと書かれてあるな……ちょっと待て」


 その儀式に付いて更に何度か前後の年代に付いて調べると。


 とある時期から備考欄の図書館のある場所での儀式が途絶えたと嘆く声が載っていた。


 何やら地震によって破損が生じて動かない云々。


 そして、その最後の儀式に際しては今後、生贄は別の入り江で下ろすとの記述。


 更に今まで儀式に使っていた祭壇は封印。

 書架にして併用と書かれてあった。


「書架にして併用? 併用?」

「どうかしたのですか? カシゲェニシ様?」

「リュティさん、ちょっと広い範囲を照らしてくれますか?」

「え、ええ、分かりました」

「エニシ。何を思い付いた?」

「少しだけ黙っててくれ。今、考えてる」


 複数の書架を大きく照らし出したランタンの光が朧に揺れる。


 その最中を歩きながら見て回り、フッと書架を左右にして行き止まりであるはずの最奥の壁が目に入った。


 其処には大きな木製の棚が置かれている。


「木製? 全部、石製の此処に? フラム!! ちょっと手伝ってくれ!!」


 木製の戸棚には本が置かれていたが、それを退かして左右前後に動かせないか確認すると前にバタンと倒れた。


「お前?! 少しは考え、ごほ!?」

「わ、悪い……ッ、だが、ビンゴだ!!」

「びんご? お前の言う事は一々分からないな!! ぬ?」


 ようやくフラムも気付いたらしい。

 書架の背後には祭壇。

 いや、明らかに錆びれたドアのようなものがあった。


 その横には赤いボタンが埃の積もった透明なカバーによって保護されている。


「押すぞ」


 カバーは難なく上に上げられた。

 ボタンを押し込むとギシギシと音を立てて、扉が開いていく。


「これはまさか遺跡の扉か?」


「何の儀式をしてたんだか知らないが、この先に秘密とやらがあるんだろうさ。リュティさん!!」


「分かりました。どうぞ」


 いつの間にかガスマスクを付けたメイドさんが渡してくる灯かりを持って薄暗い内部へと歩を進める。


 フラムは少し後ろでもう銃を取り出していた。


「先は長くないな。次の扉だ」


 まだ少なくとも動力が生きている。機構が生きているのだろう扉の先。


 現れた二つ目の鋼の扉には漢字でこう書かれてあった。


【調整室】


(オイオイ。調整だと? 生贄を調整? 何を調整してたって言うんだ? いや、待て……生贄が施設の管理者として使われてたって話だったな。なら、その施設に関連したものなのか? 使われなくなったから、そのままに放置された? じゃあ、施設ってのは運用者を調しなきゃ使えない類のヤバイ代物だって可能性が……)


 思い出されるのはオリーブ教の高僧を生み出していたシステムの事だった。


 鋼鉄の扉は何もスイッチらしきものは無かったが、一つ目の扉とは違って軋む事なく。


 スムーズに開閉し、久方ぶりの来訪者を自動で招き入れる。


『ウェルカム・ニュー・ワールド』


「何だと?!」


 聞こえてきた英語に思わず驚く。

 しかし、それは機械音声。

 ゆっくりと周囲からの光で室内の明度が高くなっている。


『ようこそ、次の世界へ。これを見ている君はいつの時代の人だろう。分かりもしないが、君には選択肢が必要だ。それがどんなものだとしても、生きている限り、腹は減るし、眠たくもなる。だから、此処で少しの間だけ学んでくれ。君がこれから管理しなければならないものが何であるかを』


 正面の罅割れたディスプレイに海図が出た。


『君がこれから捧げられる場所には一つの力が眠っている。難しい言葉で言うと【圧力式地殻調整パイル群】と言う』


「地殻?!! どんな技術だ?!! まさか、地殻を破壊して地形を変えてたのか?!!」


『これはとても凄い爆弾、おっと光と熱と衝撃を持ったものを使って地の底にある火の海を上手くこちら側に引き込んで膨らませるものだ』


(凄い爆弾ってまさか!? あのシンウンに積まれてるって話だった核なのか?!! 核でマントルを刺激する地殻運動操作だとしたら、SFの類じゃねぇか!? 世界を破滅させる気か!!?)


『そうする事であらゆる地形をとても高くしたり、低くしたり出来る。山を作ったり、海を作ったりする事が可能だ。君の生きている時代に海や汚染された場所が存在しないなら、何もする必要はない。でも、汚れている場所が多いならば、君はこれから行く場所でボタンを一つ押してくれればいい。それで勝手に力は海を綺麗にするよう動かしていく』


 他の二人もどうやら割れた画面に浮かぶ星の内部や地殻運動のダイナミクス映像に見入っているらしく無言だった。


『君が生贄に捧げられた事は知っている。君がこれからどうしたいのかは分からないが、君に選択肢を提示しよう。君は君を見捨てた人々を救わなくてもいい。君は君を見限った誰かを救わなくていい。逃げる事なら協力しよう。戦おうとする事はお勧めしないが自由の範疇だ。ただ、誰かを救おうと言うのなら、君は一人で生きる事と引き換えにこの力を使っていい。今から言う場所に力は眠っている』


 提示された海域の地図で光る場所があった。


『此処で君が一人となれば、力は姿を現す。君が必要とするならば、使うといい。最後に……ちょっとこの老人の言葉を聞いてくれ』


 機械音声だが、入力した何者かの意思が色濃く残るメッセージは続ける。


『君は一人じゃない。沢山の誰かがこの言葉を聞いた。そして、誰かがやったから、いつかの海は昔よりも綺麗だろうし、いつかの世界は昔よりも美しい。君が何を願っても、生きる限り、自分の人生を諦める必要は無い。初めて生贄に捧げられた人……彼女は幸せに子供を生んで、その子を育て、海風の中、本に囲まれながら……ついさっき長い眠りに付いた。彼女の子は今もこの美しい海を見つめる場所で生贄を捧げた人々の中、元気に生きている』


「まさか、この音声の入力者は……生贄を始めさせた男なのか?」


『オレは信じている……あの子の子供達が、いつかの子孫達が、この場所でいつかの彼女よりも幸せな今を生きるに違いないと。君にも信じて欲しい。君の選択がどうあろうときっと誰もが少しずつ前に進んでいると。やがて、生贄すら必要ない時代が来ると』


「この方……きっと幸せな人生を歩んだんでしょうね」


 リュティさんがそんな風にポツリと呟く。


『これは生贄を始めさせた男が贈る最後の言葉だ。未来の君よ……それがどんな終わりに続いていようとも、絶望の先だろうとも、生きて進め。諦めるのは死んだ後でいいはずだ』


 まるで感情が伝わってくるかのような機械音声の再生が止まる。


 そして、今までの光景が嘘のように画面が唐突にブラックアウトした。


 その後、ウンともスンとも画面が言わなくなる。


 室内の光度は落ち、やがてランタン以外の光は見えなくなる。


「……フラム」


「何だ?」


「さっきの画面の地図と今の諸島域の地図を比べたら、光ってた場所って現在は存在するか?」


「いいや、無いはずだ。入念に海域の地図は叩き込んで来た。もしかしたら、津波や地震、時間経過による海風の侵蝕で沈んだ可能性もあるな」


「そうか。だが、これで場所は分かった……次は連絡しなきゃな」


「エニシ」

「何だ?」


 フラムがこちらを神妙な顔で見つめていた。


「お前はこの国をどうするつもりだ?」

「それ、自分の家の居候に聞く話か?」


「フン。貴様の行動で今まで色々と変わってきた。だから、今回もそうなる可能性は高いだろう?」


「……共和国にとって悪いようにはしない。だが、戦争は……まだ続くだろう」


「なら、結構」

「いいのか? 祖国がピンチになるかもしれないぞ?」


 それにフンと悪い笑みで皮肉げな苦笑が返った。


「軍人が暇な時代となったら、私の青春の輝かしい1頁が台無しだ。どんな強敵も打ち倒し、どんな敵国も薙ぎ倒し、どんな相手だろうと屈服させる。それが―――」


 カッと目を見開き、彼女が自分の胸の前で拳を握った。


「フラム・オールイーストの望む今だ!!」

「ぁ~ハイハイ。ソウデスネー(棒)」


「何?! この素晴らしき軍人の鏡で模範のような私の決意を棒読みだと?!!」


「あ、おひいさま。ビスケット食べますか?」


「クッ?! メイドすら感動させられていない?!! まだ、私には何かが足りないというのか?!!」


 喚く美少女がメイドに宥められている合間に外へと出た。


 そのまま情報は得たと三人で図書館の一階まで戻ってくるとほぼ同時。


 ドガッと館内に激震と激音が走る。


 一瞬の揺れは地震かと思ったが、すぐにそうではないと気付いた。


 何故ならば、騒がしいエンジン音とキャタピラの音がしていたからだ。


 通路の先をフラムが手鏡で確認する。

 それを覗けば、一瞬で状況が理解出来る。


 戦車だ。


 戦車が正面玄関をぶち抜いて突っ込み。

 後ろにキュラキュラと履帯を退かせていく。

 その背後には複数の人影が見える。


 どうやら情報を持ち帰る前にドンパチする事はほぼ確実となりつつあるらしかった。

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