第四十一話 救出編㊶
「そろそろ、家に着くからスマホ、切るわね」
私がそう言うと、女子生徒は元気に返事をした。
「あ、はい。何かあたし、浮足立ってますね」
「いじめが終わったんだもの、当然よ」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「でも、次の――」
私は言葉を止めた。
「次の?」
女子生徒が疑問形で聞く。
(危ない、危ない。もう少しで、次の試練の順番である『私を橋から落とすか
私は自分の言葉を打ち消した。
「何でもないの気にしないで」
私の口調は
私は家の門扉まで来ていた。
「じゃあ、これで切るわね」
「はい。また、何かあったらよろしくお願いします」
「わかったわ。じゃあね」
そう言うと、私はスマートフォンの終話アイコンを押した。
私はスマートフォンを
家に入った私は、
「ただいま」
と
背中で母の、
「おかえりなさい」
という声を受け止める。
私には確かめたいことがあった。
私は自室に入ると、ノートパソコンを机に置いた。ノートパソコンを起動させる。
少しは慣れた手つきで、私は女子生徒とモミカさんが利用するサイトに接続した。
ノートパソコンのディスプレイに殺風景な部屋と地味な女の子のアバターが画面に現れる。私は女子生徒にアバターを設定してもらってから、何も部屋やアバターに手を入れていない。
私は自分のマイページから〈フレンドを探す〉というボックスにカーソルを合わせた。「モミカ」と入力する。
私のアバターがモミカさんの部屋に飛ぶ。さらに、〈モミカのブログ〉というアイコンにカーソルを合わせて、クリックする。
一番始めに現れたのはモミカさんの母親がモミカさんが集中治療室にいる、という内容のものだった。つまりは、ブログは更新されていない。
(ということは、まだモミカさんの命は危ない状態にあるのか?)
私はマウスから手を離すと、チリチリの髪が生えている頭を
(いや、待てよ。もしかしたら、もうモミカさんの命は危ない状態から脱したのかもしれない。モミカさんのお母様は忙しくて、ブログの更新ができないだけかもしれない)
そんな楽観的な事を考えながら、私は再び、〈フレンドを探す〉というボックスにカーソルを持っていった。
今度は、「アヤメ」と打ち込む。
私のアバターがアヤメこと女子生徒の部屋に飛ぶ。
私はアヤメの部屋の外枠に位置する〈コメント〉をクリックした。そこには何も書かれていなかった。空欄である。
(どういうことだ?)
私は不審に思った。
(女子生徒の〈コメント〉の欄は『死ね』という文字が沢山あったはずだ。それが今は消えている)
私はさらにマウスを動かし、再び〈フレンドを探す〉という欄にカーソルを動かした。
今度は「NONEME」とローマ字でタイプする。
すると、ノートパソコンのディスプレイにこんな文字が現れた。
『この利用者は退会されたか、すでに存在しないユーザーです』
文字の横にはこのサイトのマスコットキャラが泣いている絵が表示されていた。
(NONEMEはサイトから消えたのか? アカウントを消したのか?)
これは良い兆候なのだろうか?
このことを心から喜んで良いものか、私はノートパソコンのディスプレイを凝視しながら考えるのだった。
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