角を持ち、翼を持ち、銀色の髪をした「あなた」と、
亜麻色の髪と瑠璃色の目を持つ幼い「わたし」は、
異なる命の存在でありながら、親子のように愛し合っていた。
緑の森の奥の遺跡で、二人だけの閉じた世界の中で。
静かな筆致で綴られる情景が美しく、
それゆえに寂しさと悲しみが際立つ。
多くの言葉も名前さえも、二人の前には要らなかったのだ。
白い髪と瑠璃色の目を持つ「わたし」の旅はやがて終わる。
悪と呼ばれた者はいて、悪の本質を持つ者はいない。
討伐や復讐という苛烈な言葉は用いられることなく、
ただ切々と淡々と物語る、その静けさがすごく好き。
平和な世界の片隅の、緑色をした小さな世界で起こった出来事。