第17部:道と絆と
#00
皇国暦1589年11月1日―――
ヤヴァルト銀河皇国ムツルー宙域クェブエル星系、第四惑星アデロン。つい先日まで、星大名アッシナ家の支配下であったこの惑星に、ダンティス家の小艦隊が接近しつつあった。軽巡航艦1隻に駆逐艦3隻、それにBSIユニットを搭載した巡航母艦が1隻と、陸上部隊を乗せた強襲降下艦が1隻、従っている。
ダンティス家とアッシナ家がムツルー宙域の覇を争った、『ズリーザラ球状星団会戦』から半月以上が過ぎた。
敗北を喫したアッシナ家は、本拠地ワガン・マーズ星系まで撤退したものの、追撃態勢を整えて迫るダンティス軍に対し、離反者が続出。迎撃もままならなくなり、当主ギコウ=アッシナは一部の家臣のみを引き連れて居城のクローカー城から逃亡し、生家である隣国ヒタッツのセターク家へ帰還した。ここに星大名アッシナ家は事実上の滅亡となったのである。
このような事情であるため、もはやムツルー宙域でダンティス家に組織的な敵対行動を取る者はなく、このアデロンへの出兵も残敵掃討の類いだ。
しかも惑星アデロンを支配する勢力は、アッシナ家の傘下と言っても、ピーグル星人が中心となった犯罪組織基盤とした私兵集団であり、強襲降下艦1隻分の正規兵でも充分に制圧が可能である。
そのアデロンの衛星軌道に進入した艦隊は、地表から飛び上って来る何隻かの船―――貨物船を発見した。貨物船の集団は、コースからすると逃走を図っているらしい。軽巡の艦長が停船命令を出させるが、無視を決め込んでいる。
艦橋で貨物船群の解析データを確認したその男。ユノーから新たにトゥーダの姓を名乗るようになったケーシーは、逃走する貨物船が今は亡きオーク=オーガーの配下の船だと判断した。未開惑星パグナック・ムシュの農園からボヌリスマオウを運び、罪もない原住民を遊びで虐殺していた人間達だ。
「どうするかね?」
尋ねる艦長に、クェブエル星系制圧部隊のオブザーバーとして同行している、ケーシー=トゥーダは進言した。
「全て撃破。逃がさないで下さい」
かくして数十秒後、軽巡と駆逐艦の砲撃が始まり、惑星パグナック・ムシュで原住民の村に火を放っていたならず者達は、同様の業火で焼き尽くされた。こちらの世界でノヴァルナが名乗った、トゥーダの姓を受け継いだ者に………
▶#01につづく
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