第11部:未開惑星の謎
#00
オウ・ルミル宙域国ノーザ恒星群、惑星グバングの夜空には、四葉のクローバーを思わせる見事な星団が輝いていた………
その輝きの下、オルダニカ上のバルコニーでは、NNL(ニューロネットライン)のメール画面をホログラムにして眼前に立ち上げ、手摺に寄りかかりながら憂いた表情を見せる、ナギ・マーサス=アーザイルの姿がある。
“ナギ、ごめんね。しばらくメールをお休みします。必ずまた連絡するから。今は何も言えないの、本当にごめんなさい”
それは二週間ほど前に、フェアン・イチ=ウォーダから届いた超空間メールだった。
同じメールを何度読み返した事だろう―――
どこか具合が悪いのだろうか?…
何か心配事が起きたのだろうか?…
ウォーダ家のご当主から禁じられたのだろうか?…
それとも………嫌われてしまったのだろうか?………
…いや、そんなはずはない………だけど………
理由の書かれていない文面に、想いだけが堂々巡りを繰り返す。もう幾度ついたかも知れないため息が口から零れ落ち、夜風が銀色の長い髪を揺らした。
将来を嘱望される星大名アーザイル家の嫡男とは言え、ナギとて十五歳の少年である事に変わりはない。なぜなんだろうという疑念と、自分には理由を知る資格が与えられてないんだという焦燥と、フェアンの本心を知りたいという渇望が、若者の胸を締め付ける。
もう一度メールを送ろう…そんな衝動に駆られて新規メール画面を立ち上げるが、それが原因で二度と返信が来なくなったらという恐怖、フェアンの言葉を信じて次のメールを待つべきだという自制心が、ホログラムキーボードを打とうとする指を止めさせた。
そこに家臣から「ナギ様、こちらでしたか」と声がかかったのは、苦しい葛藤をかかえた今のナギにとって、むしろ救いだったかも知れない。
振り向いたナギの視線の先には、一番の忠臣を公言して憚らないトゥケーズ=エイン・ドゥが歩み寄って来ていた。その真剣な表情から、世間話に来たのではないと知れる。ナギもまた表情を引き締め、星大名一族の顔でトゥケーズに向き直った。
「何事か?」
「は。ロッガ家が和平条約の締結を求めて参りました。御当主クェルマス様がお呼びです」
「ロッガ家が?…皇都キヨウ周辺で、いよいよ動きがありそうだという事か…わかった。すぐに行く」
▶#01につづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます