10月4日  古書の日

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 本日2017年10月4日は「古書の日」である。


 古書の日は、全国古書籍商組合連合会が2003年に制定した一日である。「古」の字を分解して「十」「口」とし、これを組あわせた「田」を4冊の本に見立てて10月4日を記念日とした。


 今ではネットで欲しい本が簡単に手に入る様になったが、それでも私は古本屋めぐりが好きである。幾冊も並べられた本が陳列されている本棚を見るとなぜか落ち着いてくる。


 時たま、新刊よりも古書の方が魅力を感じることがある。これは私だけかもしれないが、例えば、最近角川文庫より発売された太宰治の人間失格。表紙に本を持つ主人公の姿が描かれているが、多少汚れていてもいいから私は当時の、つまり太宰が生きていた時の古書の方が魅力的に感じてしまうのだ。


 ゲームならば新しい物にグラフィックも演出も到底かなわない。漫画でも古ければ古いほど絵柄に時代を感じるだろう。だが、文は違う。古くても、大昔に出版された物でも、今なお心打つものがどこかにある。文を書くと言う事は、幾年あとまで自分を残すという事なのかもしれない。




 今日は古書の日。特別な一日である。

 我々は本日を祝福し、過ごさねばならないだろう。

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