2月23日 富士山の日
やあやあ諸君。
私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。
諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。
私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。
日本を象徴するもの。遥か昔からそびえたつもの。銭湯の背景画にかかせないもの。その山は日本一の標高を誇るが、世界から見たらそれほどの高さでもない。だがしかし、周辺に他の山の無い独立峰で、これほど整った山は世界的にも珍しいと観光客が絶えず訪れる。そう、本日2017年2月23日は『富士山の日』である。
富士山の日は、223《ふじさん》の語呂合わせの元、『山の展望と地図のフォーラム』というインターネット上の団体が1996年の1月に、山梨県河口湖町が2001年3月に、静岡県が2009年12月に、合計三回に渡って念入りに制定された一日である。
世界遺産にも選ばれた富士山は日本史の芸術に多々関連してきた。歌集、浮世絵、信仰、衣服。今も昔も変わらず、富士山の美しさに人々が息を吞んでいたと感じ取れるだろう。
おすすめのスポットから望む富士山もやはり絶景だが、この山の凄いところはそれだけではない。富士山は季節によって、天気によって、見る方角によって、ありとあらゆる表情を醸し出し、我々を飽きさせない。見れば見る程に魅了されていく不思議な山であり、世界に誇れる山である。
だが、そんな富士山にもある問題がある。
世界文化遺産登録され登山者が増えた結果、宿泊施設やトイレなどのオーバーユース問題。なにより、不法投棄による深刻なゴミ問題を抱えたのだ。この現状が続くことになれば、富士山の世界遺産を取り消す話もあるそうだ。
これに対し、私は取り消したければいっそ取り消せばいいのではないかと思ってしまった。それにより登山者が減れば問題解決ではないか。聞けば、富士山の山頂は風化により低くなってしまい、登録されている3776mに達しなくなってしまった時、コンクリートでかさまししてその高さを維持したのだと言う。低くなれば、低くなった高さで登録しなおせばいいではないか。そんな話を聞くと、富士山までせこい印象を受けてしまう。
世界遺産に登録されているからでもなく、涙ぐましい努力により標高を維持しているからでもなく、富士山はただ、そこにあれば美しい。わざわざ人間の手を加え美化するならば、いっそ立ち入り禁止にした方が神々しさが出ると言うものだ。
今日は富士山の日、特別な一日である。
我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。
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