79 お父さん、餌、月
今日は 月が大きい。白い輝きが庭を照らして昼の曇り空かと勘違いするぐらいだ。その月が池のちょうど真ん中に映り込んで、鯉が不思議そうにその周りを泳いでいる。
この鯉はお父さんが大事に育てているものだが、そのお父さんも祖父が育てているのを引き継いだのだという。いったいどれほど生きたのかわからないが、子供の自分の足ぐらいなら軽く飲み込んでしまえそうだった。
さっきから鯉はしきりに月の周りを泳いでいる。いい気になって餌を水面に映った月に投げ入れた。月がぐしゃぐしゃに千切れ、鯉が舞い上がって月ごと餌を飲み込んだ。いや、おかしい。池の光が欠けたままだ。
空を見上げると、さっきまで太陽のように輝いていた月は半分近く削れていた。バシャリと水音を立てて鯉が飛び上がると、夜の世界が戻ってきた。
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