43 雷、御者、水飲み

雷神が馬車に乗って空を飛んでいると、すぐ下の村の水飲み場で、今にも獣に襲われそうな人間の母子がいるのを見つけた。雷神は獣に雷を落とし、親子を救ってやった

「あの子供は私のものだ。大人になったら取りに来るぞ」

そう御者に告げて雷神は馬車を走らせた。

それから何年もたち、子供は力強く健康な若者に成長していた。母親は少し前に病気でこの世を去ったが、今はその悲しみを乗り越え、新しい門出の時を待っていた。今日は彼の成人式なのだ。

無事儀式が終わろうとしたその時、激しい光と音がその場に溢れた。人々は散り散りに逃げ、そして落ち着きを取り戻した頃、主役の若者がいないことに気がついた。元の儀式の場に戻ると、若者はまるで獣に食われたように無残な姿になっていた。

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