31 椅子、鳥、見習い
足を引き引き窓際に椅子を寄せ、座る。外では晴天の下見習いたちが「鳥」に乗る訓練を受けている。予想以上の勢いに萎縮してしまうものや逆に飲み込みの早いものもいるが、大半はなんとか離着陸を制御するのがやっと、といったところか。皆一旦「鳥」から降りて教官から評価と叱責を受けているが、その顔は晴れやかで新しいことを学ぶ刺激と不安に満ちたいい顔をしている。
「教官どの」ノックと呼ぶ声がして振り向くと技能教官の一人がやってきていた。
「いかがですか、今年の新人たちは」
と彼は立ち位置を探しながら緊張気味に聞いた。確か彼は基礎訓練の講師だったか、今年の生徒たちよりも自分の授業の出来栄えを聞きたいらしい。
やや手厳しい講義とお小言を言い終え、ついでに教官をお茶に付き合わせると、もう日はわずかに傾きかけ、日差しは少し赤みを増していた。足を引いて書斎に戻り、明日の授業の準備を確認する。最近の訓練はやはり少し手ぬるいらしい。自分もそれに従うつもりだったが、あの調子では将来苦労するのは彼ら生徒の方だろう。少し訓練の心構えなどもこちらでフォローするべきか。老人は胸の中で現役時代の——空の英雄と呼ばれていた時の、胸の高まりを思い出していた。
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