最後の魔女37:ダンジョン消失とリグの過去
交易都市フィーゲルの地下に突如現れたダンジョンに私と下僕いや、妹のリグの2人で侵入していた。
ダンジョンに潜る事早2時間。
ひっきりなしに襲って来るモンスターを撃退しつつ再奥へと向かって行く。
撃退と言っても私は何もしていない。倒しているのは全て妹のリグ。こき使っている訳でも私が命令した訳でもないよ? 進んで率先して前に出てくれる。
「あっそこ! くらえっ!やあ!とお!」
最初は良かった。うん、幼女が可愛らしい掛け声で戦っていたんだけど、途中からなんだか雲行きが怪しくなった。
眼前には20体を超えるモンスターがわらわらと、倒しても倒しても次から次へと沸いてくる。
全く危な気はないけど、何だか酷使してるみたいで良い気はしない。
「あははー死んじゃえ!」
心なしか狼さん怯えてない?
「逃さないわよー! 絶滅させてやるわ!」
うん、リグ何だか楽しそうね。
話かけて大丈夫かな?
「えっと、手伝う?」
「大丈夫! お姉様は見てて!」
その後も奇怪な叫びをあげながらリグの無双が続く。
私の目的はこのダンジョンマスターを消す事。
ダンジョンマスターがいなくなると、数日後にはダンジョンも消えてしまう。
交易都市であるフィーゲルにダンジョンは必要ないのだ。
「お姉様、どうやらあの先が再奥みたい」
リグの指差した先には1匹のモンスターが腕を組みこちらを凝視していた。
うーん、あれがダンジョンマスター?
何だか想像していたのと全然違う。
だって、どう見ても一つ目のサイクロプスにしか見えない。
「何者ダ貴様ラ」
お、喋った。喋るのは高位の場合だから、やっぱり今までの相手とは違うみたい。
「ん、ただの散歩。一応確認。貴方がダンジョンマスター?」
「ソウダ、ココマデ辿リ着イタ褒美ニ我自ラガ・・」
「はい、お終い」
一瞬でサイクロプスの頭を潰したリグ。
ドシリとサイクロプスの巨体が地面へと崩れ落ちる。
まだ喋ってたよ。まぁいいけど。
でもこれで、ダンジョンは消えるかな。
結局行方不明者は誰一人として見つからなかったのは残念。
帰ろうとしたその時だった。
「待て、その首置いていけ」
!?
私にもリグにも反応出来なかった誰かが何かがこの場にいる。
すぐに警戒態勢を取るが、やはり相手の姿は何処にも見当たらない。
しかし、何かがいる気配は確かに感じる。
「お姉様、下がってて」
「ん、見えるの?」
「見えないけど、たかだか低級魔族如き私の敵じゃないわ」
突如として地面に巨大な魔法陣が出現したかと思いきや次第次第にそれは収束し、リグの真下に収まった。
「えっと、もしかしてさっきの発言怒ってる?」
そのまま爆ぜた。
リグを巻き込み爆ぜた⋯。
私はいち早く後方に退避したので無傷。
でも安心してリグ。貴女の犠牲は忘れない。おかげで今ので魔力の動きをトレースして、相手の場所が分かった。
どうみても壁にしか見えないのだけど、隠蔽か擬態か何かの技なのだろう。
魔力を込めた拳をコツリと壁に当てる。私はか弱いので本当に優しくコツッてしただけ。だのにそれだけで、ガラゴロと壁が崩れていく。説明は不要だと思うけど誤解されない為に。
破壊の性質を込めた魔力を壁に流しただけ。
決して拳本来の威力じゃないよ!
私はか弱いのだから。
崩れた壁の中から出てきたのは⋯ああ、絵に描いたような魔族だった。
「まさか我の場所が暴かれるとはな」
「ねえ、魔族さん、素直にダンジョン消すなら命だけは見逃してあげる」
そう、真のダンジョンマスターはコイツだったのだ。
「フッハハハー、笑わせる。只の小娘程度に一体何が出来るというか⋯な、何だこの気配は!」
目の前の魔族が酷く同様するのも無理はない。異様で強大な気配が近付いていたのだ。
あ、リグだ。何故だかかなり御立腹のご様子。
「⋯許さない⋯お前は、お前だけは許さない。お姉様に買ってもらった服を⋯よくも!」
瓦礫の中から這い上がって来たのは、あられもない姿のリグだった。
幼女体系じゃなかったら異性には見せれない格好だったかもしれない。でも年齢的にはアウト?
いやいや、この世界は年齢的に外見の概念ではなく、見た目が全てだよ。私の持論だけど。
って、そんな事よりも危険だ。あれはヤバい。早くリグを止めないと。
魔族だけじゃなく、ダンジョン、いや、この交易都市毎吹き飛ばされてしまう。
「リグ落ち着いて聞いてね、服ならまた買って⋯」
「許さないから! 消えちゃえ!」
突如として出現した光の粒子が一点に収束していく。
ああー!! 嫌な予感しかしない。
こうなったら⋯⋯自分の身だけでも守るしかない。
魔族? 知った事じゃない。
ダンジョン? どうせダンジョンマスターを倒したら消えちゃうんだから、知った事じゃない。
交易都市? うん、流石にそこまでの被害にはならないように調整はするよ?
と、言う訳で収束した光が光線となりて、魔族を穿つ。
光線に貫かれた魔族は一瞬にして塵となって消え、光線は岩肌を貫通し、やがて爆ぜた。
ダンジョンマスターを倒した暁として、財宝とダンジョン攻略の証であるオーブがその場に落ちていた。
水色に輝く綺麗な水晶だった。時間がない為、それらをマジックバックへと放り込む。
轟音と地響きを立てながらダンジョンが崩れ去っていく。
その音を聞いて冷静を取り戻したリグを摘んで一目散にダンジョンを退散する。
道中、マジックバックより取り出した予備の服をリグへ渡した。
リグは大喜びしながら走りながらであったにも関わらず器用に着替えると、満面の笑みを浮かべていた。
「お姉様ごめんなさい、それにありがとうございます!」
幼女の微笑ましくも眩しい笑顔に時折リグが悪魔だと言うのを忘れてしまいそうになる。
服従の儀式を結んでいるのだから何かされる事はないにしてもまだ完全に心を許した訳ではない。
性格は本当に年相応のドジっ子で母性本能を擽るというか私子供はいないのだけど、何というか放って置けなくなる。
崩れゆくダンジョンを間一髪脱出した私たちは、外で待っていた強面の人に経緯を説明し、ダンジョンが消失した事を告げて足早にその場を去った。
リグが掛けていた洗脳の効果が消えていた為、「あれ俺話したっけ? 」みたいな展開になっていたからだ。
ともあれ、悩みを解決してあげたんだから有り難く思ってね。
もうこの場所には用はない。
既に日も暮れ始めていたが、次の場所へと進む事にした。
魔女の私は勿論の事、悪魔であるリグもまた疲れと言うものを知らない。
故に夜通し歩いていた。
リグは星に対して並々ならぬ知識を有してした。
「あれがかの有名な12星座の双子座です。あ、あの寂しそうに離れた場所で光り輝いているのが乙女座。彼女は過去に大罪を侵して他の12星から追放されてしまったの。ああ、あそこでこれでもかと言わんばかりに光を誇張しているのは獅子座。あいつは12星の中でも最強を誇示していてね、何でも一番じゃないと気が済まないみたい」
「なんで詳しいの?」
「それは私が元12星だからです」
え、12星?
あれ、だってリグは悪魔だよね?
私も12星と言うのは詳しくはないけど、確か神様に分類される存在だったはず。
「悪魔なのに12星?」
「そうです。神々に追放されたあげく、悪魔に堕天させられました。まぁ、悪魔になる事を最終的に受け入れたのは私なんですけどね」
しれっととんでもないことを話すリグ。
適当に相槌をうち、この話を終わらせる。
何だか凄い話だと思うけど、こんなついでに話すような内容じゃないよね。ましてや移動中だし。
後でじっくり聞く必要がありそう。
妹の事なんだし、姉としてそう、あくまで姉として知っておかなくてはいけない。
次の日の朝、目的地へ向かい、街道を真っ直ぐ進んでいると、後ろから一台の馬車が通り過ぎていった。
一般的な馬車ではなく、豪華な絢爛で、窓にもカーテンがかけられ、いかにも貴族様が乗ってますと言わんばかりだった。
恐らく護衛であろう、その馬車の前後にそれぞれ4馬の騎士が連なっていた。
すれ違いざまに、なんでこんなとこに少女が歩いてる? みたいな顔をされたが、特段止まる様子もなくそのまま過ぎ去っていく。
あの護衛たち、やけに疲弊していたわね。
それから暫く進んでいくと、血の臭いがどこからともなく漂ってきた。
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