年越しの夜

作者 海辺野夏雲

6

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★★★ Excellent!!!

寒い季節に熱い鍋を囲むのは、ひときわ温かい人のつながりを感じさせる。年越しに家族ですき焼きとなれば、なおさらだろう。しかし、それはすでに遠い日の思い出だ。鍋奉行を勤めたであろう父親はもういない。

カセットテープではない、オープンリール方式のテープというのが、時代を感じさせる。現代ならばICレコーダーにでも録音するだろうが、アナログテープはそれにはない情緒を感じさせる。古くて大きなテープレコーダーの存在感は、一家の大黒柱だった父親の存在感でもあるだろう。父親もこのテープレコーダーのように、大きくて、少々無骨ながらも情にあふれる存在だったのだろうか。

寒い冬の熱い鍋、切なくて温かい思い出という対比が、物語の雰囲気を際だたせている。年越しの物語を年末に投稿したことも、もちろん意図的だろう。

帰省先で感慨に耽った主人公は、自分の家でもそれを再現しようとするが、残念ながら妻子には理解されなかったようだ。しかし新しい家族には、新しい思い出ができることだろう。
遠い未来、娘はこの家族のどんな出来事を思い出すことになるだろう。過去から現代までの内容だが、読者としてそんな未来にも思いを馳せる物語だ。