第656話関白殿、二月二十一日に(11)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


侍たちは、

「関白様が『まだ夜が明ける前に』との御指示、しかしすでに明るくなりすぎてしまった、これはまずい、急げ、急げ」

と木を倒して手にしている様子に、私はとても興味を誘われてしまいました。

「『あなた方は、何とでも言ってかまいません』なんて言うように、本当に開き直っているんですね」とか、

「ネズミの仕業を思っているのでは?」など、私が古くからのお勤めであるならば、言いたいのだけど、結局誰かが、

「桜の花を盗んでいくのはどなたですか、それは問題がありますよ」

などと言うので、一層逃げ足速く、桜を引きずって行ってしまいました。

それでも、やはり、関白殿の御気持は、なかなか味わいがあります。

そのままにしておいたら、造花の桜などは枝に張り付いてしまって、どこまで見栄えのしない様子になったのか、はかりしれないと思うのです。

そういうことで、私は結局、何も言わずに、局に戻りました。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :確かに自然の桜とは、雨に濡れれば違いますね。

清少納言先生:おそらく昨晩に関白殿は、侍たちに御指示なされたのでしょうね。

舞夢    :目覚める前にとの、細かい指示もあったのですね。

清少納言先生:細かな配慮、さすがです。


※関白殿、二月二十一日に(12)に続く。


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