第579話清水にこもりたりしに

清少納言先生:今日は清水寺に籠っていた時の、中宮様とのやり取りのお話です。

舞夢    :了解しました。訳をしてみます。


清水寺に籠っていた時のお話です。

中宮様から、特別にお使いがよこされ、賜った唐伝来の赤い紙には草仮名で

「『山近き 入相の鐘の 声ごとに 恋ふる心の 数は知るらん』

ということであるのに、このように長く籠られるのですか 早く戻ってください」

と書かれておりました。

私としては、御無礼にあたらないような紙を持つなど忘れている旅なので、紫の蓮の花びらに書いて御返事を申し上げたのです。


清少納言先生:はい、お疲れ様。

舞夢    :入相の鐘とは夕暮れ時に突く鐘ですね。

清少納言先生:はい、中宮様は夕暮れ時の赤い空と、唐伝来の赤い紙をかけたのです。

舞夢    :この場合の紫の蓮の花は?>

清少納言先生:散華に使用する造花なのですが、それくらいしかなくて。

舞夢    :夕焼けの赤い空が、少しずつ紫に染まって、日は沈むので、それはそれで、素晴らしい色での応答になりますね。

清少納言先生:そこまでわかっていただくと、うれしく思います。


※清少納言先生は、中宮様の思いが本当にうれしかったのだと思う。精一杯の気持ちで返している。なまじ、わざわざ美麗な紙を持参してそれで返すよりは、中宮様もうれしかったのでないだろうか。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る