第551話見物は(9)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


行列が去ってしまうと、見物していた者たちは、まだ気持ちが高ぶっているので、我先にと、危険で怖くなるほど、急ごうとします。

「そんなに急いではなりません」と扇を出して止めようとするのですが、供をする者が言うことを聞かないので、困ってしまいました。

ようやく少し広い場所に出ることができたので、強く指示を出して車を停めさせたのですが、供の者たちは焦ってしまっていて気に入らないようです。

私(清少納言)としては、自分たちの車の後ろに控えている多くの車を見物するのも、なかなか面白いのです。

男車で、中に乗っている人が誰か不明な車が、自分の車の後ろに続いてくるのが、ただ道を進むよりは面白いと思っているのです。

道の別れるところで、誰かが「峰に分かるる」などと言ったのも、なかなか面白く感じました。

まだ、物足りなさを感じる場合は、気持ちがわくわくしたまま、斎院の鳥居の所まで進んで、その中をのぞいてくる時もあるのです。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :つまり斎王の車を追って急ぐ車と、自らの屋敷へ帰ろうと急ぐ車があるのですね。

清少納言先生:はい、とにかく見物する人や車が多いので、一斉に動くと危険なのです。

舞夢    :「峰に分かるる」とは?

清少納言先生:壬生忠岑の「風吹けば 峰に分かるる 白雪の 絶えてつれなき 君が心か」、古今です。

舞夢    :やはり、素晴らしいですね、そんな歌をさっと口ずさむなど。


※見物は(10)に続く。




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