第525話心にくきもの(9)

例えば、それほど立派ではない従者で、背の高いものや低いものまで人数を多くして引き連れているよりも、しっかりと手入れを行き届かせ、少し乗りならした牛車を、いかにもふさわしい身なりに整えた牛飼童が、牛が威勢がいいので遅れがちに綱に引っ張られて車を進めている様子のほうが、奥ゆかしく感じます。

細身の従者が、末濃のような袴、二藍色の何かをはいて、上着はそれなりのもの、掻練や山吹などを着て、つやのよい沓をはき、車の筒の付近を走っているのは、より奥ゆかしく見えるのです。


清少納言先生:はい、お疲れ様でした。

舞夢    :奥ゆかしいとは、より深く素晴らしいという意味がありますね。

清少納言先生:表面的な雰囲気だけではなく、心の奥底まで、惹かれるものがあるという意味です。

舞夢    :特に斉信様の残り香は、興味をひかれました。

清少納言先生:彼くらいになると、香りの調合にも、すぐれていますし。

舞夢    :若い女房たちが騒いでしまうのも、仕方がないですね。

清少納言先生:ふふ、そのとおりです。


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