第442話宰相の中将斉信(11)
帝が御物忌で籠もられている日のことになります。
源の中将が右近の将曹光某など言われる者を介して、畳紙に何かを書いてよこしました。
それを見ると
「お伺いしたく思います。ただしかし、今日と明日は帝の御物忌ということもあり、厳しいのです」
「三十の期はいかがでしょうか」
などと書いてあります。
私(清少納言)は、
「三十の期は、とっくにお過ぎではないでしょうか」
「朱買臣が妻に教えた三十九という年齢には、届いていないにしても」
と、返事を書き、届けさせました。
源の中将は、またしても悔しがって、帝にも、このことを申し上げてしまいました。
帝は、中宮様の御部屋においでになられて
「清少納言は、何故、朱買臣の故事を知っているのでしょうか」
「三十九歳の時に、朱買臣はその妻を、そのようなことを言ってたしなめたのだ」
とおっしゃられ
宣方は、
「とてつもなく的を得たことを言われてしまった」
と、言われたことが、私の耳に聞こえてきました。
源の中将は、そのように、普通の振る舞いなどをしないお方と、理解しました。
清少納言先生:はい、お疲れ様でした。
舞夢 :全て、帝に筒抜けなんですね。
清少納言先生:私にとっては斉信様が好感が持てるお方なのです。その斉信様に無理やり教えを請うでまで張り合うなんて、少し呆れます。
舞夢 :典型的なおじゃま虫の人なのでしょうか。
清少納言先生:そうは言っても、無碍にはできません。
※朱買臣の故事:三十九歳の朱買臣が妻から貧乏生活を責められ、四十歳になれば状況はよくなると諭したという故事。
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