第438話宰相の中将斉信(7)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


斉信様が参議へとの任官があった頃、私(清少納言)は帝の前で

「斉信様は詩を本当に上手に吟ぜられます」

「『簫会稽之過古廟』といった詩になると、斉信様以外には誰が上手に吟ずることができるのでしょうか」

「当面の間は、参議などにならないでのお仕えが良いと思います」

「忙しくなるとお目にかかれなくなるのが、残念なのです」

と、申し上げたのです。

帝は、大笑いをなされて

「清少納言がそこまで言ったということで、参議にはしないことにするかな」

と仰せられる、その言葉も素晴らしくありがたいものがありました。

しかし、斉信様は結局、参議へとご昇進なされました。

私としては、本当に寂しく思いました。


※簫会稽之過古廟:「簫会稽の子廟を過ぐるや、託けて累代の交を締び、張僕射

が心才を重んずるや、推して忘年の友となす」和漢朗詠集の大江朝綱の詩序の一部。

「忘年の友」は、長幼の序を忘れるほどの親友を意味する。


宰相の中将斉信(8)に続く。



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