第371話とりどころのないもの

清少納言先生:今日はとりどころのないもの、つまり取り得のないもののお話です。

舞夢    :了解しました。訳をしてみます。


取り得のないもの。

くろ井のくしはらえ。鉄製の毛抜きで毛がよく抜けないもの。焼き硯。

古びて黒くなって雨漏りする板屋根。黒土を塗った壁。古くなってすぐに欠けてしまう墨。

容貌も悪いのに、性格も悪い人。

御衣に姫糊を塗ったままで、砧で打たず、光沢が出ていないもの。

こういうものは、世間一般で、かなり嫌われるものだ。

しかし、今は書かないではいられない。

「あと火の火箸」ということは、世間でよく言われることだけど、意味を書くまでもないだろう。

この枕草子は、まさか他人の目に触れるなんてことは考えなかったので、まさかこんなこととか、書きづらいことも、思うがままに書こうと思ったのです。


清少納言先生:はい、お疲れ様。

舞夢    :焼き硯というのは?

清少納言先生:陶磁器の硯で、見た目はきれいだけど、墨が擦りづらいのです。

舞夢    :あと火の火箸というのは、火葬の時の骨拾いの箸ですね。

清少納言先生:そういう箸は一度使えば使わない、つまり箸としては取り得がないということになります。

舞夢    :枕草子の成立の話も続きますね。

清少納言先生:うん、まさか、こんなふうになるとは。


枕草子は作者の清少納言先生としては、いろいろ思うだろうけれど、平安期の実資料としても正式な史書と並ぶ、あるいはそれ以上の価値を持っていると思う。

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