第368話円融院の御果ての年(6)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


お笑いになられている中宮様を、藤三位は引いてみたり、揺さぶってみたりして

「なぜ、こんなふうに騙してからかったのですか。本当に巻数と思って信じたので、作法通りに手を洗い清め、伏し拝んで見せていただいたのに」

と、ついには笑ってしまいます。

少し悔しそうにしている姿は、本当に得意げでもありますし、魅力があります。

そんなことがあった後にも、藤三位は清涼殿の台盤所でも笑って大騒ぎ、局に下がった後は、その童を探し求めて、立文を取り次いだ時の女房に童の顔を見せるのです。

取り次いだ女房は「はい、この童に間違いがありません」と答えます。

藤三位が

「お前は、誰からのお手紙を誰がお前に渡したの?」

と、童に聞くけれど、童はまったく答えないのです。

そして、そのまま何もわからない様子で笑って走り去ってしまいました。

大納言も後で、この話を聞いて、かなり笑って面白がっておられました。


清少納言先生:はい、お疲れ様でした。

舞夢    :これは帝と中宮定子様が、真面目な女房をからかったのですか。

清少納言先生:はい、その通りです。でもこれは私が宮仕えをする前のお話です。

舞夢    :宮中でも語り草だったのですね。


やはり、枕草子には、史書にはない人間のやりとりの面白さにあふれている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る