第349話などて、管得はじめたる六位の笏に

清少納言先生:今日は他愛もない話ですが、おもに衣服の名前です。

舞夢    :はい、訳をしてみます。


「どういう意味があって、官位を得てから六位になって初めて持つことができる笏に、職の御曹司の辰巳の隅にある築地塀の板を使うのかなあ、西でも東でも笏として使えばいいと思うのだけど」

そんなことを仲間の女房が言いはじめたことから、他愛もない話が始まってしまいました。

「装束でもね、いい加減な名前が付いていると思うの、それがよくわからないんだけど、例えば衣装の中で、細長は見た目からそんな名前になったのだと思うけれど、汗袗の場合はどうしてかなあ、汗袗は尻長と言えばいいと思うの、男童が着る尻長のようにね、それから何故、唐衣なのかな、短い衣と言えばいいと思う」


「そうかなあ、でも唐衣は唐土の人の着物だから、そう言うんじゃないのかな」


「上の衣や上の袴はそうとも言えるけれど、下襲もそうかな」


「大口もね、丈の長さに比べれば裾の口が広がっているから、そういう名前でもいいけれど、袴はみんな面白くない名前だよね。指貫は何故指貫って言うのかな。足の衣と言うべきと思うなあ。指貫のように脚を包み込むものは、袋で十分なのに」


そんな他愛のないことを言い合ってうるさいので

私(清少納言)が

「もう嫌だって、本当にやかましい、つまらないおしゃべりはやめて、もう寝ましょう」

と言うと、返事をしたのは夜居の僧だった。

「途中で止めるのは、本当によくないことです、ここまで話が盛り上がるのなら夜明けまで続けられたらどうですか」

と、おそらく女房たちの会話を彼もうるさく感じていたらしい、強い口調で投げ捨てるような感じで、言ってきた。

これはこれで、その僧侶の人間味が感じられて面白かったし、また驚いてしまった。


清少納言先生:はい、ご苦労様。

舞夢    :まさに「ナマの会話」ですね。話の内容はともかく。

清少納言先生:単なる暇つぶしの会話だけどね。

舞夢    :それでも貴重なことに思います。


このような会話を残してくれた清少納言先生にも、感謝である。

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