第345話頭の弁(行成)の御もとより(1)
清少納言先生:今日は頭の弁の御もとよりのお話です。
舞夢 :了解しました。訳をしてみます。
頭の弁の藤原行成様から遣わされた主殿司が、おそらく絵を白い色紙に包んで、梅の花が素晴らしく美しく咲いた枝につけて、届けてきました。
当方としては、絵であると思っているので、さっそく几帳の中に運んで確かめます。
しかし、その中身は餅餤というものを二つ並べて包んだものでありました。
添えられてある立文には、解文のような書き方で
進上 餅餤一包
例に依て進上如件
別当 少納言殿
とあって、後ろに月日、「みまなのなりゆき」という署名と、末尾に
「この下男は、自ら参上をしようと思うのですが、昼間ですと容貌に不安があるので、伺候を遠慮するようです」など、素晴らしい筆跡で書いてあるのです。
清少納言先生:はい、そこまで。
舞夢 :今の世でも人気が高い行成様です。
清少納言先生:ほお・・・それはそれは・・・
舞夢 :餅餤は定考で供したものですね、お餅の中に鳥の卵や野菜が入った唐菓子。
清少納言先生:はい、それを立文と解文で持ってくるのですから、絵と間違えました。そのうえ、「みまなのなりゆき」みたいな別名をつかったりしてね。名前をわざわざ逆にしてある。「ゆきなり」を「なりゆき」とか。
舞夢 :そもそも、行成様は能筆で有名なお方ですが、文もお洒落ですね。
清少納言先生:行成様の書いたものは、皆、欲しがりましたよ・・・
頭の弁(行成)の御もとより(2)に続く。
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