第339話関白殿、黒戸より出させ給ふとて(4)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


中納言の君が、忌日のため奇特にも仏行をなされておりました。

私が

「ぜひ、お貸し願いたいのです、はい、その数珠を少しだけ」

「私も中納言の君にならってお勤めをすれば、来世には素晴らしい運勢の持ち主になるでしょう」

と言いますと、他の女房たちも数珠を借りようと、中納言の周りに集まってしまい、笑っています。

ただしかし、それにもまして関白殿のご威勢については、ただただ素晴らしいと言う意外はありません。

そんな私の様子を中宮様がお聞きになられて

「来世で仏に生まれ変わったほうが、関白の地位よりは上になるので、かえって素晴らしいのでは」

と、にっこりとされるのです。

私は、そんな中宮様の上手なおっしゃり方に、本当に感心してしまって、中宮様のお顔を見申し上げるのです。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :確かに念仏を唱えていれば、来世は仏になるわけですね。

清少納言先生:そうですね、そう言われてしまうと、納得せざるおえません。



中宮定子と清少納言の当意即妙な会話である。

短い生涯となった中宮定子も、清少納言との会話は千年過ぎた現在でも残っている。

その意味においては、清少納言と出会えて結果的には幸せだったのだと思う。

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