第320話わびしげに見ゆるもの

清少納言先生:今日は、わびしげに見ゆるもののお話です。

舞夢    :了解しました。訳をしてみます。


みじめな感じに見えるもの。

六月から七月の日中、一番暑い時間帯に、汚くなってしまった車に痩せて老いた牛をつないで、ガタガタと車体を揺らして通りを行く者。

雨が降らない日なのに、雨覆いの筵をかけたままの牛車。

すごく寒い日とか暑い日に、身分の低い女で、貧相な格好をした者が、子供を背負っている姿。

黒ずんで汚らしい板葺きの家が、雨の中に見える様子。

また、大雨の日に、小さな馬に乗り前駆を勤める人の場合で、冠も傾き袍も下襲も雨に濡れて身体に張り付いている様子。

本人も、本当にみじめに感じていることだと思う。

それでも夏のほうが、冬に雨に濡れるよりは、ましだと思う。


清少納言先生:はい、お疲れ様。

舞夢    :確かに可哀想な気がします。

清少納言先生:少し遠慮しないで書いたけれど。

舞夢    :それぞれ、事情があるのでしょうね。

清少納言先生:貧富の差というのかな、そういうのが辛いかなあ。


厳しく書いているようで、何とかしてあげたい(できないけれど)、複雑な清少納言の気持ちが、込められている一文。

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