第283話淑景舎、東宮に(11)

夕暮れ時になりました。

帝がお起きになられまして、山の井の大納言をお呼びいれになります。

御袿を着替えられてお帰りになります。

桜色の御直衣に紅の御衣を着けられた御姿が、夕日にはえてとても美しいのですが、畏れ多いこともあり、これ以上は書きません。

山の井の大納言様と中宮様は、母親違いの間柄ですが、本当に仲良しです。

明るさや美しさでは、伊周大納言よりも勝っておりますが、世間では母親の身分の低さから、伊周大納言様より劣っていると言われているのは、本当にお気の毒になります。

さて、帝の還御の随従は、関白殿、伊周大納言様、山の井大納言、三位の中将隆家、内蔵頭頼親たちです。

帝からのお使いとして、馬の典侍が参上し、中宮様に清涼殿にぜひお出ましになるようにとお伝えになるけれど、

中宮様は

「今宵はどうしても」

とためらっておられます。

それを関白殿がお聞きになられて

「それは、本当によくないことです、早く参上なさってください」などと申し上げている時に、東宮から淑景舎へのお使いもしきりに来られるので、なかなかの大騒ぎになっています。


淑景舎、東宮に(12)に続く。

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