第257話五月の御精進のほど(13)
中宮様のお言葉の通りだと思いまして、歌を詠んでこなかったのは、本当に困ったことだと話をしていると、藤侍従公信様が先程お持ち帰りになった卯の花に添えて、卯の花襲の表が白くて裏が緑の薄様紙に書いて、歌を寄越したのだけれど、その歌など忘れてしまっています。
もはや、そういう状態で、その返歌を詠まなければなりません。
硯を局に取りに行かせると、
中宮様は
「そのまま、ここにある道具を使って、すぐにお返しなさい」と御硯と硯箱の蓋に紙を載せて差し出されました。
私(清少納言)が、
「宰相の君、あなたが」と言うと
宰相の君は
「いや、清少納言様に」と牽制しあっているうちに、空も暗くなってきて、雨が降り出し、雷も激しくなってきたので、どうにもならなくなって、怖さのあまり、御格子を夢中になって下ろしている間に、返歌の話題も立ち消えになってしまいました。
清少納言先生:はい、そこまで。
舞夢 :それは珍しい、失敗ですね。
清少納言先生:私としたことがねえ。
舞夢 :それでも、中宮様の生の姿がわかるので、貴重です。
清少納言先生:そう言っていただけると、助かります。
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