第233話無名といふ琵琶のお琴を(1)
清少納言先生:今日は無名の琵琶のお琴のお話になります。
舞夢 :了解しました。訳をしてみます。
「無名」という琵琶のお琴を帝がもってこられた時のことになります。
ある女房が
「みんなが見たりかき鳴らしたりしていますよ」と言うので、私も弾くまではいかないけれど、絃に手を触れている時に、中宮様に
「この琵琶の名前はどうでしたでしょうか」とお聞きすると
中宮様は
「これは、それほどたいした楽器ではないので、名前もついていないの」とおっしゃられた。
それはそれで、素晴らしいお返事だと思いました。
淑景舎の女御が、中宮様のところに来られて、お物語などをなさっている折に、
女御が
「私のところに、本当に素晴らしい笙の笛があります。亡くなってしまった父にいただきました」
とおっしゃると隆円僧都の君が
「私は素晴らしい琴を持っているので、それと交換していただけませんか」
と言ってきた。
そんなことは誰も聞き入れないし、話題を変えてもいるのに、隆円僧都の君は、返事を欲しがり、何度でも言ってくるので
中宮様が
「名笛の『いなかへじ』と同じくらいに大切なものです、交換などもっての他です、彼女はそう考えていますよ」ときっぱりと言い切った時の様子は、最高に素晴らしかったと思います。
清少納言先生:はい、そこまで。
舞夢 :普通は形見の品は簡単には手放せないものです・
清少納言先生:「いなかへじ」は帝秘蔵の名器、それほど大事と言い、きっぱりとね。
舞夢 :隆円僧都の君は、出家された身ですね。
清少納言先生:だから、そんな名器も知らなかったと思うけれど。
舞夢 :それにしても、僧都の君も中宮様と同腹のご姉妹。
清少納言先生:だから、あまりひどくは書いていない。
舞夢 :亡くなったお父様も、笑っているのかもしれませんね。
中宮様の三姉妹の会話をそのまま書いてある。
なかなか、興味ひかれる話と思う。
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