第212話職の御曹司におはしますころ(13)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


当日の十五日は、まだ暗い時間に起きました。

使いの者に、折櫃などを持たせて

私(清少納言)は

「これに雪山の白い部分を入れて持ってきておくれ、汚れている部分は取り捨てて」と指示し、取りに行かせると、本当にすぐに帰ってきて

使いは

「もう、とっくに消えてしまっていましたよ」

と言ってきます。

私は、そんなはずはないと思いますし、上手に詠んで人の話題となるように、苦労の上にできた歌も披露できずに無駄になってしまいました。

なぜ、そんなことになったのだろう、昨日までは聞くところ、しっかりと残っていたはずなのにと、がっかり沈み込んでいると

使いが

「木守が申しますには、『昨日の晩の真っ暗になる頃までは、残っていました。これはご褒美がいただけると思っていたのに』と言い、手を打って残念がってておりました」と大声で話していると

宮中の中宮様から

「ところで、雪は今日まで残っていましたか」とのお言葉でしたので、本当に癪にさわり残念ですが

「『昨月の中旬くらいまでで、元日までは持たないでしょう』と、他の女房たちが中宮様に申し上げましたのに、昨日十四日の夕暮れまで残っていたのは、我ながら上手に言い当てたと思っています。もし今日まで残っていれば、これは過ぎたることかもしれません。夜中に誰かが私の予言を邪魔しようと、憎んで捨ててしまったと思っています、と申し上げてください」と使いの者に指示をしたのです。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :思いもよらない展開ですね。

清少納言先生:まさかの事態でねえ、驚きました。


職の御曹司におはしますころ(14)に続く。

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