第152話懸想人にて来たるは(1)

清少納言先生:今日は懸想人の話というよりは主人と家来のお話です。

舞夢    :了解しました。訳をしてみます。


恋人として女君のところへ通ってくる男君は当然として、恋人ではない話し相手程度の関係でなんとなく通ってくる男君などが、私が御簾の中で他の女房たちと話をしている時に、その男君が私たちの会話に加わろうと部屋に入り込んで、なかなか帰ろうとしない場合があります。


それを見た男君の従者や男童が、あれこれと御簾の中とか覗き込んで、主人の様子を観察して

「これだと、斧の柄も朽ちてしまう」と、長々と待たされることに、文句を言ってくる。

そのうえ、長々とあくびをして、他人には聞こえないと思って

「ああ、つらいなあ、迷惑だなあ、どうしようもなく面倒、もう夜も遅いのに」と言うのだから、本当に気に入らない。


まあ、不平を言う従者なんて、元来そんなものだけど、気にしても仕方ないとは思うけれど、そんな従者を連れてくる男君に対しては、今まで交わした会話とかその中身まで含めて、すっかり興ざめになる。


清少納言先生:はい、そこまでで。

舞夢    :主従の関係で・・・しつけがなっていないと・・・ですね?

清少納言先生:斧の柄の話は、普の国の人が仙人の囲碁を見ているうちに、ものすごく時間が経ってしまって、持っていた斧の柄が朽ちてしまったということ。まあ、従者というのは、そういう文句を言うものだけど。

舞夢    :それでも、いつ終わるともわからないのを待っているのも、辛いんでしょうね、少々同情です。


現代で言えば「お抱え運転手」のようなものかもしれない。

主人を、ただ待っているだけの仕事も、楽なようでつまらないのだと思う。


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