第116話職の御曹司の(10)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


行成様には見られたくなかったので、本当にがっかりです。

一緒にいた式部の御許は私の方を向いておりましたので、行成様からは顔を見られることがないのです。

行成様は几帳の影から、登場されて

「いやいや、すっかり最初から最後まで拝見しましたよ」とおっしゃられるので

私は

「則隆とばかり思って軽くにしか考えておりませんでしたよ、どうして見ないと言ったのに、そんなことをなさるんですか」と文句を言うと

行成様は

「女性というものは、寝起きの顔が一番可愛らしいと言う人がいてね、ある人の局に寄ってこっそり見てね、もう一度見ることが出来るかなとね、想ってきたのです」

「まだ帝がお出ましの頃から、清少納言様は私などには、お気づかれなかったですね」とおっしゃられる。

それから後は、局の簾をかぶったりまでして、入ってきたりするようになりました。


清少納言先生:はい、お疲れ様。

舞夢    :なかなか、してやられたんですね。

清少納言先生:まあ、楽しかった頃の話です。


恋愛関係というよりは、信頼のおける話相手、そんな関係と思う。

清少納言と藤原行成、歴史に残る文化人同士の飾らない関係が、今でも新鮮に思える。

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