第66話小白河といふ所は(7)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


藤大納言が誰よりも熱心にのぞき込まれ、「何といわれたのか」とおっしゃられたようです。

すると、三位の中将が「本当に素直な木を無理やり曲げたようですよ」と申し上げると、藤大納言がお笑いになります。

居合わせたものが、つられて笑う声が女車まで聞こえたのでしょうか。

中納言が「それで、呼び出される前はどうでしたか?これは書きなおしたのものですか?」と尋ねられたので、使いの者が「長い間立って待っていたのですが、何も返事がないので、『ご返事がないので帰りましょう』と帰りかけたところ、呼び止められて」との返事でした。

権中納言が「いったい、誰が乗った御車でしょうか、ご存知ですか」と不思議がり、「さあ、今度は歌を詠んで届けましょう」などとおっしゃられているうちに、説教の講師が高座に上がったので、皆静かに座り、講師の方だけを見ていると、例の女車は、いつの間にか消えるようにいなくなってしまいました。

車の下簾などは、今日が使い初めのようで、濃い単襲に二藍に染めた織物、蘇枋の羅の上着などを着て、車の後ろの簾からも、摺りだし模様の裳を広げたまま衣にするなど、本当に誰なのでしょうか。

あの応対もなかなか、中途半端な返事よりも、なるほどと納得もできますし、かえって気がきいているように思われます。


清少納言先生:はい、お疲れ様。

舞夢    :帰られてしまわれたのですね。

清少納言先生:少し残念でした。

舞夢    :やりとりとか、姿の消し方とか、無理やりさもなく。

清少納言先生:消えるときは、頃合いを見計らって上手です。

舞夢    :謎めいているのも、なかなかです。



後から新車で来て興味だけをひき、さっと帰る。

これはこれで、印象に残られたのではないだろうか。

正体不明も、なかなか面白い。


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