第35話すさまじきもの(8)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


何かの折に使う扇で自分でも気に入っていた扇を、自分と同じ趣味と思っていた人に渡しておいたのに、当日になり、せっかく渡した扇を忘れて、どうでもいいような下手な絵を描いた扇を渡された時。

産養の祝儀や、旅立ちの時の餞別を届けてくれた使者に、心付けを渡さない人。

たとえ、薬玉や卯槌を持って祝福に行き来する人に対しても、心付けは渡すものです。

あてにしていないことで、心付けをもらえると、本当に使いに来てよかったと思うでしょう。

逆に、もらえるものだと思って、胸をときめかして行ったのに、何ももらえないと、ことさらがっかりするものです。


清少納言先生:はい、お疲れさま。

舞夢    :たいへん、わかりやすいです。

清少納言先生:扇はがっかりします。

舞夢    :なかなか、難しいですね、人は様々です。

清少納言先生:心付けは、舞夢君の時代にはあるの?

舞夢    :えーっと・・・ほとんど、ないかなあ。

       外国だとチップとか、枕銭というのがあるかな。

清少納言先生:時代も習慣も変わったのですね。


清少納言先生は、少し寂しそうな顔をした。

扇の話はともかく、今は「心付け」は、ほとんど聞かない。

たとえお金ではなくても、ほんの少しでも、何かあるといいのかな。

でも、世知辛く忙しいこの時代、なかなか難しい。

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