第33話すさまじきもの(6)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解です。


除目の時に、新しい官職に就けない人の家。

今年こそは必ず任官されるだろうとの噂を聞きつけ、以前仕えていたけれど、主人が失職中は他所で働いていたり、田舎に住んでいた人が皆、戻ってきています。

邸に出入りする車を停めて、下してある轅(ながえ)も隙間がないほど、ぎっしりと並んでいます。

主人が願掛けでどこかに参詣に行くと、我も我もとお供をし、邸内では様々飲食、大騒ぎもしているのに、夜の闇がすっかり明けるまで、任官の知らせの門をたたく音が無い。

これはおかしいなと思い、聞耳を立てていると、前駆追う者の声々が聞こえてきて、任官式に出席する上達部など、皆がお出かけになるのです。


様子を見に、昨日の晩から寒さに震えていた下男が、相当落ち込んで歩いて来るのを見ると、人々は「どうでしたか」などと聞くこともできません。

他所から来た人が、「ご主人はどのような」と聞いてくるので、返事は「どこそかの国の前の守」ですと、必ず答えるのです。

この主人を本当に頼るしかない人にとっては、心底ため息が出る思いです。

早朝になると、隙間もないくらいに座っていた人が一人、二人を音もたてずに消えていきます。

元から仕えていて、帰ることもできない人たちは、「来年の国守の任期が終わるのは、どちらとどちらでしょうか」などと、指折り数えながら、ふらつきながら歩き回るのも、御気の毒でがっかりする思いがするのです。


清少納言先生:はい、お疲れさまです。

舞夢    :待つ身は、つらいですよね。

清少納言先生:うーん・・・そのものですね。

舞夢    :それでも蓄えとか、荘園があるから生活はできるのでしょうね。

清少納言先生:名誉もありますしね、派閥もあります。

舞夢    :除目の時期は、複雑な思いがあふれますね。

清少納言先生:まあ、そういう立場にいるとね、そうなります。

舞夢    :帰る場所とか、他所で働く場所があればいいけれど。

清少納言先生:そこの家の主人だけを頼りにしている人は、本当に必死です。


おそらく、清少納言は、この除目に任官を得ない人の家の様子を実際に見たのではないかと思う。

とにかく実況中継なみの、描写である。

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