視点が変わると、世界も変化する。対比、裏表。そんな「2」がこのガーデンにはつまっていた。最後の「1」もいるガーデンなのに。1であり2でもある。なんて素敵!
前編だけを見ると、ただただ良質な逃避行のストーリーに思える。想う相手と宇宙に逃げる主人公。後編で、それは瞬時にして覆る。エゴと偽善、因果とその顛末。星新一さんのショートショートを思わせる、見事などんでん返しでした!映像で見てみたいような気にさせる作品です。
男の子だからバカなのか、人類全てが愚者なのか。それでも歌う、恋の歌……
物事は、視点によって変化する。観測者によって、物事は多様な側面を見せる。胡蝶の夢とは、まるで現実の儚さを哀しんでいるようで、実際は夢の素晴らしさを説いている。現実と、夢。どちらが本物かは、見るものによって大きく変わるのだ。そんな寓意を与えてくれる、素晴らしいSF!
そんなことを、考えさせられました。保護される側はそれを望んでいるのか?エゴ、自己満足と言ってしまえば、それまでですが、絶滅危惧種を保護するなとは言えないジレンマ。読み終わった後に、考え出せられることは、きっとあると思います。
もしこの作品を前編だけで止めている人がいるとしたら、その方はこの作品の面白さ全てを投げ捨てていると断言できます。是非、前後編セットで読んでみて下さい。私はそれでやられました。いいですか。セットです。セットで読んで下さい。お願いします。(土下座
1万字前後という字数縛りがある中、世界観と物語の構成がしっかりまとまっててとても面白かったです。前半、架空の生物たちが集まるガーデンの美しい描写に、宇宙を駆ける逃避行……すっかりロマンチックな気分に浸ったところで、後半に訪れる衝撃。そこに込められた深いテーマに、ぞっとせずにはいられませんでした。なんとなく脳内では手塚漫画の絵で再生されてました。素敵です。
『銀河絶滅危惧種保護庭園』に保護された美しい羽と、歌声をもつ『クヌト族』の最後のメス――リルリ。彼女との出会いを通じで心震え、そして揺れる主人公のヤシロ。二人の逃避行から逆転する物語は示唆的でもあり、皮肉的でもある。人類のエゴと傲慢さが垣間見える良短編!!