3人のプリンセス(2)


 翌日。彼女らから昨日のうちにあったアクション……それらを再確認していた。


 まず、兵頭妃世子。

 妃世子のメールは独特で、彼女の力の抜けた話し方をそのまま文字にしたようなもの。


『最後のゲームなー、せっかくなら参加したいんだけどなー、アタシには荷が重いんだわー。

 だってなー、明樹斗とのゲームで、アタシだけ誰も捕まえられなかっただろー? ショックだったんだよなー別にそうでもないけど。まあそんなわけで、アタシはいち抜ーけたってことで。

 あ、アタシへの口止め料は、食べ物がいいなー。んじゃ』


 妃世子は、ゲームから下りた。口止め料は食べ物ね。彼女らしい。なら、全国の……いや、全世界の名産品を彼女に送ってやろう。



 次いで、巴友利。


『不参加とします。私は恐かった。その恐怖から開放されたい』


 彼女からのメールは、そんなシンプルなものだった。彼女は突出した記憶力を頼りに勝ち残ってきたが、頭の回転という意味では少し劣っていたようにも感じていたし、自身でも分かっていたんだろう。



 そして、残る3人……菜夕、桜子、香美乃。この3人は、最後のゲームへ参加してくれたんだ。



 中でも一番返信が早かったのは菜夕。彼女のメールには、3度質問出来るルールにも関わらず2つしかそれは書かれていなかった。


『質問①:天海飛鳥は、土曜日の13時に、アマビルディングのカフェに来て、私と会うことは可能でしょうか。

 質問②:主催者は、土曜日の13時に、アマビルディングのカフェに来て、私と会うことは可能でしょうか』


 質問①については、YESと答えざるを得ない。僕は1度ビルで菜夕と会っているのだから、それが不可能ということはありえないからだ。


 では②はどうか。仮にそれに対してNOと答えたとしよう。すると、菜夕は当日、僕とだけカフェで会うことになる。だが、僕は主催者なのだから、質問②に対してNOと回答したことと矛盾する。

 よって、質問①がYESとしか言えない以上、質問②もYESと答えるしかないんだ。そしてYESと答えたなら、当日菜夕と出会うのは天海飛鳥であり、デスゲームの主催者ということになる……菜夕は特定成功になる、というわけだ。質問③を使っていないのは、万が一僕が主催者でなかった場合の保険かな。


 菜夕が行ったのは、質問に見せたこちらへの要求。YESと答えた以上、僕がその行動を取らないと回答が嘘だったということになってしまうから、ゲームが成立していないことになってしまうんだ。


 さすが成宮菜夕だ。



 そして迎えるのは、菜夕の質問にあった日。10分前行動でカフェに到着すると、そこにはすでに菜夕の姿があった。


 カフェの前にあるベンチに腰をかけ、脚を組んで文庫本を読んでいるようだ。本を読んでいても、それを凍て付かせてしまいそうな目は相変わらず。姫カットの長髪に、白いワンピースも、僕にとってはお馴染みだ。

 菜夕が白だろうと思って、僕も白いワイシャツで揃えてみたけど、並んだら洗剤のCMみたいになりそうだ。まあ、僕もだいたいいつも白い服なんだけどな。


「菜夕。すまん、待ったよな」

「いえ、今来た所です」


 声をかけると、菜夕は一瞬だけこちらを見てから、すぐに文庫本に戻したかと思うと、さっとしまって立ち上がる。

 定番の返しをしてきたけど、文庫本なんて見ていたということは、それなりに待ったってことだよな……。


「入ります?」

「そうしようか」


 菜夕に促されて、カフェに入る。お昼時で客足は多かったが、幸い待たずに席に着くことが出来た。



「菜夕。これで君は、主催者が誰か特定出来たのかな?」

「ええ。あなたですね天海飛鳥くん。もっとも、特定ゲームがなくても99%以上そうだと確信していたのだけれど」


 テーブル挟んで菜夕の前。ここでもやはり、菜夕の目はこちらを向いていない。というより、僕の目も菜夕を捉えていない。なぜなら、菜夕が席に着くなりバケツサイズのパフェを注文し、テーブルの中心にででんと構えてしまったからだ。


「そうか。なら加えて質問させてくれ。先日明樹斗とやり合った時、このデスゲームはデスゲームでないことを話した。あの時の菜夕の反応を見るに、元々そうだと気付いていたようだが、なぜ気付けたんだい?」


「気付かない方がおかしいと思うのだけれど。

 最初に招待状を貰い、車が爆発した瞬間こそ驚き不安にかられました。

 しかし、それが私のいた所だけでなく、他の場所でも複数発生したことを知り調べると……どの土地も天海グループが関わっていることに気付きました。それ以降も、全て天海関係。天海といえば、全く整合性がとれていないような多種事業に参入しつつ、にも関わらずどれもトップクラスという変態的企業ですよね。

 そんな大企業が、人殺しなんて不祥事を起こしたらどうなるか……。そう考えれば、デスゲームのデスは脅し程度だと分かるでしょ」


 語りながら、手にしたスプーンは止まらない。僕は見ているだけでしばらく甘いものはいらなくなる……。


「……さすがだよ菜夕は。菜夕がいたことで、ゲームもより盛り上がったと思うしね。本当にありがとう」

「それを言うなら、私こそお礼を言わないといけないのだけれど」

「え?」


 菜夕はそう言うと、すでに5分の1程しか残っていないパフェ横にどかして、


「ありがとうございました」

僕の目を見て、そう言った。もっとも、すぐに目線はパフェに戻ってしまったが。

「どういう意味だい? 僕が今日ここに来たのは、謝罪もするつもりだったからなんだけど……」


 菜夕は、なぜお礼なんて言ったんだ? 正直、26人の女性達全員に謝って回らないといけないくらい、迷惑をかけたと思っていたのに。


「私は大学生なのだけれど……一言でいうと、ぼっち、でした。大学は本来、勉強や研究をするための場所だから、その方面は充実していたのだけれど……やはり、遊びたいですよね。でも……私は私だから。そんな時、こんなゲームへの招待をいただき……」

「まさか、デスゲームを遊びと捉えたということか!?」

「はい。普段は周りの方にどれだけイラついても何も出来ませんが、ゲームならば好きなだけ薙ぎ払ってしまえばいい。爽快でしたよ」


 ……やっぱり性格曲がっているな、こいつ……。


 けど、菜夕は女優にも劣らない……いや、超える程の美人だ。多少性格がアレでも、周りが放っておかないんじゃ? 菜夕がコミュニケーションを拒むタイプならぼっちにもなるかもしれないが、遊びたかったけど輪に入れなかった、というような言い方だったよな……。


「あの。今度はこちらから、質問良いですか?」

「もちろん」


 僕が菜夕を観察するようにしてしまったせいだろうか。せっかく脇にやったパフェをまた戻し、顔を隠すように食べ始める菜夕。口を開く時は完全に中に食べ物がない状態にしているし、食べ方も綺麗だから不快ではないけど。


「確か、26人の女性を巻き込んだんですよね、デスゲームは。私のように、嘘だと気付いていれば楽しめるかもしれないのだけれど、そうでないなら地獄です。いったい、なんのためにこんなことを?」


 菜夕から話を振られてしまったが、僕がここに来た最もでかい理由がそれに答えることだ。真実を言ったら、嘲笑されるのか、奇異の目で見られるハメになるのか……。


「このゲームの正式名称、教えるよ。……お見合いデスゲーム、だ」

「……はい?」

「お見合いデスゲーム」

「おみあいですげーむ……」


 菜夕は聞き返して、やけに一文字ずつはっきりと言いつつ反芻して。

 元々表情が豊かな方じゃないし、目を合わせてくれないから、見た目上の変化はあまりない。だが、明らかに戸惑っているようで、そんな菜夕を見るのは初めてだから新鮮な気分となった。


「バカみたいだろ? けど、父にいきなり26人とお見合いしろと言われてね。ふるいにかけつつ、頭の良い女性を残すにはどうしたらいいか……そう考えた結果だよ」

「ふるい……」


 菜夕はすでに、パフェを完食していた。だから今、店員が空になったバケツ的ガラスの入れ物を持っていき、菜夕の顔を隠すものはない。


「私はそのふるいから、振り落とされることなく残った、と」

「そういうことになるね。君は本当に素晴らしい女性だよ。出会えてよかった」


 なんだろう。これまで菜夕は、意図的に目を反らしていたようだったけど、今はただ、困惑して下を向いてしまっているように見える。どうした。


「……ちょっと、こちらを向いてもらえますか?」

「ん?」


 菜夕はそう言って、こちらを向く。僕が見ても、視線を変えることはない。


「……どう思います?」

「どう、というと? んー……とてつもない美人で、髪型と服装が相まって清楚な印象を受けるな」

「……」


 菜夕が黙ってしまったんだが。その目は、いつもと同じ冷たい印象を与えつつも、僕に何かを訴えかけているような今は、そこまで強くは感じていない。それよりも、こんなに長く菜夕を見つめるなんて初めてで……いや、人をこんなに見つめるなんて、か。そろそろ僕の方から目を反らしてしまいそうだ。けど、不快じゃないな。なんだか、心地よいというか、慣れているというか……。

 あ、そうだ……こう冷たくて、何かこちらを見透かされるような目……これ、クリスと似ているんだ。初めてクリスと会った時は、怖いと感じて苦手だったんだよな……。


「……そろそろ耐えられなくなってきました……」


 なんてクリスのことを考えていると、先に根を挙げたのは菜夕の方。新たに注文していたコーヒーフロートを、顔を隠すように飲み始めた。


 チープに言うなら、完璧に近い顔を持った菜夕。だけど、さっきからやたら顔を隠すし、これまでだって目を反らされてばかり。顔に何かあるのか……?


「……これは自慢話じゃない、というのを念頭に置いて聞いて欲しいのだけれど……私は生まれて22年間で、お付き合いした方は2桁に上ります」

「それはすごいな。僕なんて1人もいない。……それこそ自慢にならないな……」

「ただ、ですね。私はその方達と、長くとも1カ月しかお付き合いしていません。そして、1度も私から振ったことはありません。付き合い始めは、必ず相手から告白されたのに、です。ですので、もうここ2年は、誰ともお付き合いしていません」

「1カ月……?」


 難しい性格をしていそうだとは思うが……短すぎる。


「どうも原因は、私の目にあるようで」

「目……?」

「はい。そもそも相手の顔を見るのが、私は得意ではないのだけれど、1週間もすればさすがに出来るようになります。飛鳥くん、私の目を見て、冷たいとか、見透かされそうと感じませんでした?」

「否定はしないが……」


 菜夕はもうフロートを飲み終えると、また僕の方を真っすぐに見た。やはり、彼女の言うことは否定出来ない。


 ああ、そうか。菜夕と付き合った彼氏諸君は、これが嫌だったのか。恐らく、菜夕の見た目の良さから、彼女のことをちゃんと知る前に勢いだけで告白してしまったんだろう。これは偏見だけど、そんな軽い連中は後ろめたいことだって多いはず……菜夕に全てお見通しのような目で見られれば、逃げてしまうだろう。


 そして、これで分かった。菜夕は大学でぼっちとなる理由が。男子からは友達ではなく女として見られるし、女子からはたくさんの男を弄ぶ悪女に見える……そうして、孤立していったんだ。そんな状況じゃ、性格を曲げるなという方が無理だ。


「飛鳥くんは、私の目を見て話してくれますよね。思えば最初に出会った時も、私の目を見てくれようとしていました。今だって、一度たりともあなたからは離さない……初めての経験です」


 ……クリスで慣れていた、とは言わない方がいいな……。


「ただ、そんな私です。私自身も私の目のように、冷たい人間であることは自覚しています。さて、私がなんでこんなことを言い出したか、なのですが……」

「ああ」


 菜夕は、割とハキハキした方だと思っていたんだが、今日はやけに間を取るな。まあ、今の件だって話していて気持ちのいいものじゃない……分からなくはないけど。

 けど、今回の溜めは本当に長い。今に至っては、下を向いて口を手で覆いつつ、こちらをチラチラと上目遣いで見てくるだけ。


「……とりあえず、お会計を済ましましょ」

「え?」


 僕の、え? を聞く前に、菜夕はレジに向かっている。付いて行くしかないじゃないか……。



「……」


 カフェから出て、先日ゲームをしたばかりの歓楽街を歩く。今はもう、仮面が溢れることなんてなく、ただただ人が行き交うだけの場所だ。

 菜夕はあれから、一言もしゃべらない。会計の時も僕が出すからと止めたのに無言で全て払われたし、別の店に入ろうかと言っても返事すらなく通り過ぎるだけ。


「なあ、菜夕。さっきはいったい、何を言いかけたんだ?」


 そんな彼女に、言いにくいからこうなっていることは分かっているが、聞いてしまった。デリカシーがないと我ながら思うよ。


「……」


 菜夕が足を止めれば、僕も足を止める。菜夕の瞳が、また僕を映してくれた。


「……私で、良いのでしょうか?」


 そうして菜夕は、ポツリと呟く。加えて、若干の間を置いてから、


「……これを確認したかったからです。私が先程、私のことをお話ししたのは」


と言った。


「ん?」


 何がだ? 何が菜夕でいいのだろうか? 何についての確認だ……? しかもあの、熱など持たないようにも見えていた菜夕の顔、若干上気しているようにも見える……凄まじく美人なのに、加えてかわいさも出現していて……もう目が離せない。


 まずこの話、スタートはどこだっただろう。僕がお見合いデスゲームについて話して謝罪したら、菜夕にお礼を言われた。そして、菜夕はふるいにかけて残った奴だよ、と伝えて……。


 ん? ……お見合いで、残った……?


「ああああ!」

「!? どうしたんですか?」


 僕が叫ぶと、菜夕はもちろん、周りの通行人からも注目されてしまう。それ自体も恥ずかしかったが、僕は重大な伝達ミスをしていて穴があったらマントルまで掘り進めたい。


 僕のお見合いデスゲームは終わったが、お見合いそのものは、残ったメンバーと実際に会って色々と考えるつもりだった。けど、僕のさっきの言い方だと……お見合いデスゲームの結果、僕が菜夕を選んだように聞こえないか!? 菜夕以外にもふるいで残った奴がいるとは伝わらない……!


 要は……菜夕は、僕がお見合いの結果選んだ女性だと、勘違いしている!


「あ、あの、飛鳥くん?」


 どうしてこうなった!?

 いや確かに、途中から菜夕の様子はおかして、あれが僕の遠まわしな告白だと解釈した上での反応なら納得がいくさ。さらに僕は、菜夕のコンプレックスをいっさい気にしない態度をとったから、菜夕から見たらより僕が本気のように見えたんじゃないか? それもただ、クリスで見慣れていたからなんともなかっただけなのに!


「な、菜夕! その、僕は……」


 ヘタレだ。誰がどう見てもヘタレだ。ヘタレと検索したら僕がトップに出るくらいのヘタレっぷりだ。女性経験がないのが原因だけど、どうしてこう言葉が出ない? 間違いを訂正するだけでいいのに!


「! 飛鳥くん!」


 そこに。


 僕の身体は後ろに強く引き寄せられ、身動きが取れなくなってしまった。それは菜夕も同じで、何物かが……あのピエロのような仮面を着けた連中が、彼女を羽交い絞めにしている。


「天海飛鳥。成宮菜夕。選べ。どちらか1人は助けてやる」


 次いで、機械音声が耳元で響いて来た。これもまた、菜夕も同じようだ。

 周りを見ると、ここが歓楽街の中心から外れた場所であるとはいえ、人が全くいなくなっていた。僕がテンパっている間に、この仮面達が何かしたのであろう。


「菜夕……大丈夫か? すまない……僕は頭を殴られたのか、どうにも意識が……君が選んでくれ……」

「私が……?」


 僕がそれを告げると、菜夕を拘束していた奴は、一旦菜夕を解放する。だが、決して彼女から離れることはない。またすぐにでも拘束出来る距離だ。


「私が、私か飛鳥くん、どちらか選んだ方には危害は加えないということですか。では、選ばれなかった方はどうなるのでしょう?」

「……」


 菜夕の言葉に、仮面は何の返答もない。機械音声は、先程のものしか用意していなかったということだ。

 そして菜夕は、またデスゲームをやっていた時のように、全てを凍てつかせるような目を携えて腕組みを取る。なぜこんなに落ち着いていられるのだろうか?


「……あなた方が明樹斗くんの仲間だとするならば、狙いは飛鳥くんということでしょ。先日のお話から、それ以外考えられないのだけれど。

 当初は私達を狙っていたとのことですが、デスゲームは終わった……今更私を狙っても意味がないでしょ。にも関わらず、なぜ選択肢に私が入るのでしょう? 私が自分の身かわいさに私を選ぶ可能性が高いと踏み、残った飛鳥くんを連れ去れると思ったのでしょうか?

 そうだとすると、なんて回りくどい。さっさと飛鳥くんを連れ去ればいいだけの話でしょ」


 菜夕は一歩、自分を拘束していた仮面に近付く。もともと至近距離にいたそれと、立っているだけで触れる距離に。


「飛鳥くん。デスゲームの主催者でありながら、明樹斗くんの登場でゲームに参加……先頭に立ち、結果明樹斗くんを打ち負かした。そんなあなたが、少し頭を打ったくらいで、自分で判断することを放棄するとは思えません」


 今度は、僕の方に近付いてきて、その吐息が直接僕の顔にかからん位置に立つ。そして、菜夕の溜息に、僕は襲われた。


「まだゲームは終わっていなかった、ということでしょ、飛鳥くん。でも、これでクリアですか?」


 そうして、菜夕が僕に背を向けると、仮面の奴らは去って行ってしまった。


「……バレバレだったかい」

「ええ、それはもう」


 今の仮面達。明樹斗とはなんの関係もない、僕が用意した奴らだった。当然、僕は頭なんて打っていない。周りに人がいなかったのも、この人通りが少ない場所に来たら、軽く人払いをしてから僕達を襲えと言ってあったからだ。

 目的はもちろん、菜夕の反応を見るため。単純に、僕か自分自身かどちらを選ぶのか、というものだったが、菜夕は仕込みだと気付くのが早すぎる。なんでも見透かしていそうな目の持ち主、ではなくて、本当に何でも見透かしている目の持ち主、ということじゃないか。



「……不愉快です。先程の私は……醜態を晒しました」

「な、菜夕……」


 そしてその目は、僕がまだ、菜夕を選んだわけではないということも見通したんだろう。まだテストがあったということは、そういうことだと。


 だから正直、これは失敗だった。せっかく菜夕が、どうも僕になびいてくれそうだったのに。なびく要素なんてあったとは思えないが。……まだ菜夕を選んだわけじゃないのに、何を考えいるんだ僕は? だけど、菜夕に嫌われてしまってはもう選ぶことは……。


「不愉快過ぎるので、ヤケ食いに付き合ってもらいましょ。まずはパンケーキ、次は鯛焼きです。そうしたらアイスクリームを食べて、次はぜんざいです」


 かと思えば、菜夕はまた、その瞳に僕の顔を映していた。嫌われたわけじゃなかったのか……。拗ねただけ? それとも菜夕も、自分の勘違いに気付いて大穴の建設を始めたい気分なんだろうか?


 まあ、話していけば分かることか。


「……和と洋を交互に……甘いものとしょっぱいものを交互に、というものと同じ感覚かい? いいよ、全て僕が出すから」

「やった」


 僕の言葉に、菜夕は小さくガッツポーズをした。そんな菜夕は初めて見る。



 僕は、死に直面することで、人の真価を問えると思ってデスゲームを開催した。だけど、そんなものだけじゃ、分からないことばかりなんだな。



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