際立つ者達(4)


「クリス、全員集まったか?」

「はい。もちろん、互いが見合い相手だと認識されると特定メールに繋がってしまうので、全員別々の場所に集めています」


 翌日。昨日に引き続き、今日もゲームも行う。


 本日の会場は、“天海”と“アパレル”とをもじったファッション系集合ショッピングセンター、“アマレル”。当初は服飾に特化して事業を展開していたが、時代のニーズに合わせて食料品や雑貨も揃え、大きな映画館やゲームセンターも備えている。それでもテナントは服飾関係が多く多数のブランドを取り扱っているため、女性客が7割以上だ。


 今回も見合い相手以外にも多数の人間がアマレルにいるが、客ではない。今日はこのゲームのために臨時休業として、大量のエキストラを雇って客風に過ごして貰っているんだ。それらは全員、背中に番号が書かれたゼッケンを着用している。今回も、番号を使ってゲームを進めていくということだ。これはもちろん、見合い相手にも配布されている。


 僕とクリスは、僕の部屋でモニタリングだ。前回のようにまとまったひとつのゲームをするのではなく、1対1で繰り返し行うものだから、その方が都合がいい。


「はーーい皆様ーー、ようこそお集まりくださいましたーー! ただ今より、ここアマレルで行うゲームの説明をさせていただきまーーーす!」


 僕らがちょうどモニタに注目した時、本日の司会の男が声高らかに宣言してカメラの前に現れた。今日は、ニヤリと笑ったピエロみたいな、不気味な仮面を被った奴。頭はフードで覆っているから、素の首から上は全く見えない。デスゲームにはちょうどいい気がするな。仮面裏に仕込んでいるのであろう変声器で声を変えていて、余計に不気味さが増す。


「皆様にはすでに、番号が書かれたゼッケンを配布しております。周りを見てお気付きの通り、皆様以外の方も、同じようにゼッケンを着用していただいております! このゲームにおいて、このゼッケンはあなた方の命も同然……決して脱いだり、上から隠したりしてはなりません! それを確認した場合……ふふ、言わなくても分かることでしょう!」


 仮面の男は、一言一言、手を大きく広げたり、大きく後ろに下がったかと思えば一挙にカメラに近付いたりしてくる。盛り上げ上手といえばそうかもしれないが、なんかうざいな。


「今回のゲームは、アマレルの1フロア全てを使用するものです。1フロアは約1万平米ほどある広大なもの! かつ、たくさんのテナントや、何より人が多い! よって、容易ではないこと、ご想像いただけるでしょう! なお、別のフロアに移動された場合がどうなるか……ふふふ、言わなくも想像つきますかねえ!」


 引き続きのオーバーリアクションでうざいことこの上ないのに、さっきと同じ締め方をした司会。よく見ていると、そのリアクションも数パターンの繰り返し……底が浅いのを隠すために見た目を怪しくしているんだな、こいつ。


「皆様は、1対1の勝負を行っていただきます! それ以外の方は別室で待機です。負けた方がどうなるか……イメージしてくださいねー?」


 ……また同じこと言ったぞ?


「……」


 全力でバカにしそうなクリスでさえ、何も言えない程呆れているようだ。もうゲームが始まるまでモニタリングはやめにしよう。どうせルールは僕が考えたんだから聞く必要はない。


 この特定ゲームのルールは、こうだ。


<特定ゲーム>

 ・対戦相手を特定し、その番号をメールで送信することを目指すゲーム


 ・アマレルの1フロアを利用する

 ・参加者及びアマレル内エキストラは、背中に番号の書かれたゼッケンを着用している

 ・ゼッケンを脱ぐ、上から別の服を着るなど、番号を隠す行為は厳禁


 ・探索のヒントとして、スマートフォンに自動インストールされた、探索アプリが利用可能 

 ・アプリは、ゲーム開始10分後より使用出来る。探索ボタン押下で、5秒間相手の位置情報を平面図に表示する

 ・1度探索ボタンを押すと、1分後まで使用出来ない



 さて。ルール確認をしたところで、ある程度時間が経ったはずだ、そろそろモニタを付けるか。


「そのようにゲームを進めていき、対戦相手の番号が分かりましたら、ただいま皆様に送信しましたメールに対して、番号を記述してご返信願います! ただし! 当然何度もメールが出来る訳ではございません……メール出来るのは1度だけ! 勝敗は、対戦相手に番号を特定されてしまうか、そのメールで特定失敗したら敗北というもの……敗北したらどうなるか……いい加減このフリ、しつこいですかねえ!」

「しつこいわ!!」

「しつこいです!!」


 残念ながら、未だ司会がしゃべっている場面に出くわしてしまい、クリスとハモって突っ込んでしまった。人選ミスだ、まったく。


「飛鳥、さっさとゲームを開始するよう、司会にインカムで伝えました」

「グッジョブ」

「痛み入ります」


 うざいを通り越した空気ブレーカーがいると、それ以外の人間は協調し合えるんだな……。

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