第3話 私の戦い
「へぇ大きく出たな。お前みたいなっと」
私が隠れるぐらいの火球を飛ばし、
「ほぉ……ノーモーションでそれか……」
「はぁあああああああ!」
避けられた瞬間、火球とともに近づいた私が怪物に斬り、
「なるほど、炎の剣か……熱そうだな」
下がったところに火柱を出す。
「……へぇ」
しかし、無傷。
「つ、ぎぃいいいい!」
今度は吹雪で動きを止め、背後からの氷礫。
しかし当たり前かのように避けられる。
「まだぁああああああ!」
次は左右から岩でサンドし、そこを鉄球でつぶす。
しかし、岩は壊され、鉄球は砕かれる。
「これ……ならぁああ!」
光の目くらましからの全方向からのレーザーで焼く。
しかし、効果がなかった。
重力でつぶした上で鉄球を落とす。
しかし、立ち上がり、重力で加速した鉄球すらも砕く。
酸の雨はしかし、溶けることはなく、毒はしかし、効かず、今度はしかし、次はしかし、そしてしかし、それからしかし、しかししかししかししかししかし……。
「多彩なバリエーションにそれが続く体力。それにまだまだ与力もありそうだ。なるほど。これほどの強さならこの範囲もうなずける。これならあの群れにも立ち向かえたんじゃないか?」
すべてはしかし、無駄だった。
それでも私は絶え間なく攻撃を続けていった。
絶え間なく考え続け、利用するものは全部利用して、戦いながら考えて、動きながら考えて、すべてを読んで、すべてを知る。
考えて考えて考えて考えて、頭が擦り切れるぐらい考えて、相手の情報も自分の情報も全部全部を考える。
これは戦闘経験のない私が唯一知っている戦い方、ゆっきーさんの戦い方だった。
昔の私にはできない、いまの私の戦い方。
ゆっきーさんの心を読んだからこそできる戦い方。
戦いの中で心を読んだのは大きなネズミとの逃走劇の一回だけだからゆっきーさんの足元には及ばないけど、考え方は読ませてもらった。
いまの私ならそう簡単には倒れない!
「まだ! まだ……!」
攻撃をしながら次の一手を……
「いや、次は俺の番だ」
衝撃。
とっさに簡易的なを結界を張ったがそのまま飛ばされた。
「がっ……はぁ……」
急いで魔法で回復し、態勢を……。
「どこを見ている?」
横からの衝撃。
何をされたかもわからない。
「おい!」
空中から地面に向けて叩き落とされ、
「呆けてる!」
地面につく前に蹴り上げられ、
「暇など!」
結界に接する前に別の方向に飛ばされ、
「あるのか!?」
「が……あ……」
地面に叩きつけられる。
「ほぅ……まだ生きているのか……なるほど自分に結界を張っていたのか。よく破れなかったな」
結界を張っていたおかげで直撃はしなかったが、かなりの衝撃が体を巡った。
私はかろうじて立ち上がる。
「だが、もうフラフラだな。さて、攻撃がきかず、俺が圧倒的だと知らしめられ、今度は何をやってくれるのかな? それとも、もう死ぬか?」
怪物の言う通りだった。
このままだと私は何もできず、やられる。
でも……!
「ああ、もしかしてあの一般人が逃げる時間を確保できればいいとでも思ってるのか?」
「どう……でしょうね」
そもそも、ゆっきーさんは逃げてくれているのかな?
私と怪物を覆っている結界が厚すぎて外がよく見えないや。
できれば逃げていてほしいけど……。
「そんなお前にいいことを教えてやろう。俺は空間を移動できる」
「え?」
「俺の速さの理由はそれだ。厳密には速いんじゃなくて空間を移動していたんだよ」
それってつまりゆっきーさんが言っていたおじいさんと同じ類の能力ってこと?
「お前の頑張りは無駄さ。どれだけ時間を稼いでも俺はあいつを殺せる。その気になれば今すぐにだって殺しにいける」
「……」
「なぁ……どういう気持ちだ? どんなに頑張っても守れるものを守れず、何も出来ないことを突き付けられるのは?」
「……」
そう言われて私は何も言わなかった。
「何も言えない……か。まぁいい」
突然怪物の体が私の視界の中から消えうせ、その声は私の背後から聞こえた。
「死ね」
私はとっさに体を向けるがしかし、もう遅かった。
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