城跡巡り - 現代(地元を旅行)

 隣り合う伊賀と甲賀、忍者で有名なこの地には、数多くの城跡がある。

 城跡を巡るのが趣味である私は、休日を利用して、伊賀上野に来ていた。

 ここから北上して、甲賀も少し巡りたい。


 城跡というと、どのようなものを想像されるだろうか。

 彦根城や姫路城のような、天守閣も残っているお城だろうか。私も、入り口はそうだった。

 天空の城として有名な竹田城跡や、安土桃山時代の由来である安土城跡のように、石垣が残っているものだろうか。石垣が残っていれば、城があったのだとわかりやすい。


 その様な所も、もちろんいいのだが、私はそこで満足するような域を通り越してしまった。

 私のような物好きでなければ足を運ばないような、どうにか痕跡からあったのだとわかるような、中世の城跡を探し出すところまで、はまってしまったのだ。

 史料と地図から目的地へ行き、その痕跡を探し出す。スタンプラリーやオリエンテーリングのような感覚でもある。



 まずは、図書館へ行き、目的地を確認する。

 同好の士がネットに情報を上げてくれているが、きちんと確認するために、図書館で郷土資料を当たる。

 事前に準備していた情報をチェックしていく。目的地が山の中ということも多いので、場所の確認は重要だ。


 まず向かったのは、伊賀上野城。日本で二番目の高さを誇る高石垣がある。

 上から見下ろすのもいいが、下の堀の向こうから見上げるのもいい。

 現在の天守閣は、昭和初期に建てられたもので、正式名称は「伊賀文化産業城」という。

 昭和初期に建てられたとはいえ、きちんとした木造の天守閣であり、狭く急な階段など、戦国時代を思わせる作りになっている。

 新しいものというのは、後からいくらでも更新できるが、日本で最後の木造の城になるかもしれない。


 そのまま、上野公園内を散策する。

 公園として整備されているだけのことはあり、案内板や石碑から城跡を知ることができた。

 一通り見たら、レンタカーを借りに行く。

 公共交通機関の乏しい田舎で、広範囲を自由に移動したいとなれば、自動車は必須だ。

 レンタカーを借りたら、ここからが本番だ。



 伊賀と甲賀は日本有数の城郭遺構密集地帯で、併せて 800以上の城跡がある。

 正に、少しの移動で次の城跡へと辿り着くことが可能だ。

 一方で、その数から、全てを訪れるには、かなりの時間が必要だ。おかげで、これまでも何度か訪れている。


 地図を頼りに近くまで行き、場所を見つけて車を駐める。

 そこから、林に入ったり、竹藪に入ったりしながら、土塁の跡を探し出しては、写真に収める。

 喜春きはる西館と喜春東館の様に隣接している所もあり、割とスムーズに見学できているつもりでいた。

 しかしながら、やはり探索に時間が掛かっているのであろう、佐那具さなぐ駅付近の城跡を巡り終えた時には、日が沈みかけていた。


 暗くなってしまっては、探索はできない。

 来た道を少し引き返し、ホテルにチェックインする。

 宿泊施設が少なく、せっかく進んでも宿泊のために引き返さなければならない。辛いところではあるが、仕方がない。

 ホテルで、事前に立てた計画と、今日の成果を見比べれば、やはり少ない。

 甲賀まで入りたいと思っていたが、叶いそうにない。


 藤林長門守ふじばやしながとのかみ城跡は、無理そうだ。

 雨乞山あまごいやまでギリギリか。

 それならばいっそ、北へ向かおうとしていた所を、途中で東へ改め、霊山れいざんへ向かってみるものありかもしれない。

 色々と考えては見たものの、結局は当初の予定通りの方向で、行ける所まで行くことにした。

 どうせ、このペースなら、これからも何度も通うことになるのだ。



 結局、雨乞山に辿り着くことすらできずに、タイムリミットが来てしまった。

 これはもう、楽しみがまだまだ残っていると考えておくことにしよう。

 いつか必ず、全国の城跡を踏破する、毎度のことながら、そう心に誓い、私は帰路についた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る