第7話:初めて空を飛ぶ

 扉を開けた先には、だだっ広い空間が開けていた。

 ステータスを起動して、もう一度地図を表示させると、ここはもぬけの殻だったらしい。

 どうやら、この部屋を見る限り魔王はいない。

 その情報さえ、裏切り者たちによって流された誤情報だったわけか。


 ただ、地面には白い布切れが落ちていたため、何かのマークか?と思い拾っておいた。

 似たようなものは周囲になかったし、ダンジョンの中にこんな目立つものはないだろう。

 布をポケットに入れて、もうこのダンジョンには用はないし、裏切り者たちのところへと裁きに行くか。

 俺は元来た穴を通って上へと上がっていくことにする。


 上壁の穴を見上げて俺は……、 


「そういえば、俺って飛べるのか?」


 ふと、そんな疑問がわいた。


 物質支配(操作系)は、空間もさることながら、空気さえ操作できるものだ。


 念じながら、飛んでいる自分をイメージする。

 周囲の気流を押し上げるように動かした。


 最初、思ったよりもスムーズではなかったが、くる~とゆっくり回転しながら上昇することができた。


 慣れてくると、空気を蹴って走ったり、自由に空気を操って身体を浮かせることができるようになった。


 念力のようなイメージから鳥が自由に空を飛ぶイメージをすることで、操作の結果も変化したのだ。


 そのままもといた階層へと飛び出し、出口へと向かった。


 壁をぶち破り、俺は外の空気を再び吸うことに成功したのだ。

 まさか、死なずに戻ってこれるなんて思ってなかったから。

 この先何しよっかな?

 とりあえず、前の世界でできなかったことでもするか。


「出来なかったこと……誰にも支配されず、平穏に生きたいな」


 すでに物質は俺を支配できない。これは抵抗不可だ。

 あとは人に支配されないようにか……。


「人に支配されないようにというか、個人からも国からも自由でいたい……。もしそれを邪魔する奴がいるなら、容赦はしない。けど――」


 力で支配すると、結局魔王なんだよな。

 いやなることに全く抵抗はないけど。問題は……、

 

「平穏な生活では、なくなるかもしれないんだよな」

 

 力のある俺に人々が正義を掲げて立ち向かってくるかもしれない。

 まあ、返り討ちにするのも構わないけど……やっぱりやりたいようにできなくなるんじゃ、本末転倒だよな。

 まあ、適当に力のことは誤魔化すか。支配されなければそれでいいか。


 俺はそのまま裏切り者(二人の騎士)がいるポイントまで飛んでいく。

 

 俺は木のそばで何かを食っちゃベっている二人を見つけて、ゆっくりと地面に着地してから声をかけた。


「おい、お前たち、よくも騙したな!」


 振り返った裏切り者たちは声をあげた。


「なっ!」

「どうしてお前が!」


 二人は驚愕の顔をして、俺に剣を構えた。

 やはり、俺に見せていた笑顔はただの営業スマイルだったみたいだ。

 通りで冷遇されているはずの俺に優しいと思ったよ。


「いまさら何言ってんだ? お前たちが隠した能力でダンジョンを出てきたにきまってるだろう」


 裏切り者には制裁をしなきゃな。

 俺はニヤリと笑って、


「――この意味わかるよな?」

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