8-17 再生への第一歩

 六人は綿密に打ち合わせ、「クジャバリ再生計画」の青写真を作り上げた。


 中心になったのは、遺跡に通じるレルシェントと、何より遺跡の力で地上を再生させる計画を前々から温めていたオディラギアス。

 この「王者の試練」は、レルシェントにとっては霊宝族の過去の不始末の清算への第一歩であり、そしてオディラギアスにとっては自分が国全体で行おうとしていることをシミュレーションする格好の場であった。



 ◇ ◆ ◇


 一行がまず取り掛かったのは、ゼーベルがメイダルで習得してきた魔法鍛冶師まほうかじしの技術を使った、上質の武器の製造だった。

 材料となるシージェ鉄は、隣国ガリディサ王国まで赴いて、買い付けた。

 代金は、レルシェントが古魔獣を倒して得られる素材を加工して作り出した魔導具を換金したもの。

 魔導具としてはさほど複雑でない――空中を飛行することを可能にする程度のものだが、飛行能力を持たぬガリディサ王国の蛇魅族には値千金だ。

 かくしてそれは高値で引き取られ――大量のシージェ鉄を買い込むことができた。


 そして。

 そのシージェ鉄は、機獣を倒して得られるイージャル鋼と合金にして上質武器材料にする。

 魔導武器は使えない。

 試しにレルシェントが、その祈りで神意を問うと、オルストゥーラ女神から「今回は魔導武器を他者に与えることはなりません。地上の武器で工夫なさい」との託宣が降りた。


 かくして、一行は城塞の一室をゼーベルの鍛冶部屋――魔法で鍛冶するので、火を起こさなくても材料さえあればいい――にしてもらって、そこにゼーベルと助手としてマイリーヤを残し、残り四人で機獣狩りに出かけた。


 この狩りは、疲弊しているクジャバリを落ち着かせるため、周囲から機獣と古魔獣を追い払う効果も狙ったものだった。

 また、古魔獣由来の素材は、他へ売って金に換えたり、またレルシェの手にかかれば、前述のように、別の魔導具の材料にもなる。

 追い払いの効果は一時的だが、これは定期的に繰り返すことで、素材の調達と安全確保に繋がった。


 この武器を使うのは、無論六人ではない。

 クジャバリに駐留する一般の護衛士たちだ。

 彼らにこれを贈る、その目的は――



 ◇ ◆ ◇


「さて、皆の者。これより、以前より話していた、遺跡の無害化作戦を決行する!!」


 オディラギアスが、声を張り上げた。

 石畳の街の広場、お触れを告げる時などに使う高い台の上からだ。


「優秀なる我が同胞ならすでに理解していようが、この作戦は、クジャバリの未来そのものがかかっている!! 作戦が成功し、遺跡を我らが栄えある龍震族の支配下に置くことができるなら、繁栄、そして戦士が次なる力を蓄えるための安寧を確保することがたやすくなる!!」


 彼の目前、広場には、ほぼ全ての龍震族護衛士が集結している。

 様々な色合いと鱗と翼を持つ彼らの姿は、色鮮やかな甲冑に身を包んだ武士のように、勇壮でありながら華やかさもある。


 オディラギアスが、殊更軍人の演説調なのは、その方が一般の龍震族に理解しやすいからだ。

 本来なら霊宝族の所有物である遺跡を、すでに自分たちの当然受け取るべき財産のように表現するのは礼儀にも道義にも反しているが、このことはすでにレルシェントに話を通してある。とにかく、一般龍震族の理解しやすさ優先だ。


「我らが遺跡に突撃をかければ、溢れだした機獣と古魔獣が、この街を襲うであろう!! その対策のため、部隊を二つに編成した!! 部隊分けは、すでに各自に通達した通りである!!」


 オディラギアスの手前の石壁に、葦紙の部隊分け表が張り出されている。


「防衛部隊とは言え、決して気を抜かないでほしい!! もし、遺跡の攻略が成功したとしても、我が戦士たちの生活の基盤が破壊されては、全て無意味である!! 戦士らしく、油断することなく、城の鉄壁となって領地防衛に臨んでほしい!!」


 防衛部隊と突撃部隊は、完全にくじで決められ、性別や出身階層、年齢、ましてや鱗の色などで決めてはいない。


 突撃部隊を指揮するのは、オディラギアス始め、レルシェント、ジーニック、イティキラ。

 防衛部隊を指揮するのは、サイクゥゼウス、そしてゼーベルとマイリーヤだ。


「では、全員配置に就け!! 今より作戦完了が確認されるまで、ただのひとときたりとも油断はまかりならぬ!!」


 こうして、クジャバリの護衛士たちを巻き込んだ、「遺跡無害化作戦」が決行されることになった。


 それは、危険を承知で、クジャバリの龍震族たちに、自らの未来を掴ませる作戦。

 誰かに、未来を投げっぱなしにするのではない。

 それでは、彼らは未来を掴めない。

 この作戦は、クジャバリの龍震族たちが、自分自身を助け、彼ら自身で遺跡を克服する、未来への第一歩だった。

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