芳香は惑乱する:#8 訃報と動揺

 二日後、詩織が接客をしていると、本社の鮫島営業本部長から電話が入った。

 接客を手の開いた販売員に変わってもらい、受話器に向かう。


 それは、『フォセット・駅ビル店』の店長、樋口祥子が、今朝マンションの自室で首を絞められて殺害されているのが発見されたというショッキングな内容のものだった。


 鮫島の話によると、昼ごろ『駅ビル店』のチーフから電話が入り店長の祥子がまだ出勤してこないと連絡があり、彼女のスケジュールを確認。

 スケジュールには、その日彼女は、開店時から店舗に出勤することになっていたため、彼女の自宅の電話に連絡を取ってみた。

 しかし何度かけ直しても繋がらずに、佐伯販売部長が自宅に直行。管理人に事情を打ち明け部屋の鍵を開けてもらい、彼女の部屋の中で、変わり果てた樋口祥子の遺体を発見したと言う。


「えっ?」


 どういうこと……、

どういうことなの?


 祥子さんが殺されたって、

どういうこと……?


 詩織の目の前が暗転した。


 祥子さんが……、

祥子さんが殺された……?


 事実を認識できない。

 そして、しばらく声を失う。

 気が遠くなる。


「は、葉月君……。大丈夫かい?」

 鮫島の声に、意識が戻る。


「えっ……。ええ、大丈夫です……」


「そんな状況なので、しばらくの間『駅ビル店』は店長が不在になる。そこで、次の店長が決定するまでの間、忙しいとは思うが君に両店を見て欲しいのだが……」

唐突ではあったが、状況的に見て致し方ないと思われる指令が、鮫島の口から詩織に告げられた。


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