EPILOG

騒霊は屈折する:騒音源/Source of Noise


     *


「なんだって、原因がわかったって」

 孝之が帰宅するとすぐに、香住が嬉しそうに言った。


「ええ、ただの建物の構造上の問題だって、近々専門家が来て調査した上で修復するって……」


「取り敢えず、これでウチに対する疑惑は晴れたわけだな」

 孝之も安堵の表情を浮かべた。


「ええ」

 香住は、もうこれで何もかも解決したと、ほっと胸を撫で下ろした。


 その夜、香住はゆっくりと風呂に入り、一連の出来事を日記に記すると、早めに寝床に就いた。


     *


 コツコツ……。

 コツコツ……、コツコツ。


 何処からか……、音がする。

 真夜中の静寂を破って、断続的に……。

 コツコツと、フローリングの床を敲くような音がする。


 〝〟のバスルームでは、血だらけになった男が古い包丁を横に置き、買ってきたばかり新品の出刃包丁を袋の中から取り出すと、幾つにも別けられたポリ袋から取り出した肉片を、一心不乱になって切断する作業に没頭していた。

 

 細かく、細かく……、

 更に細かく……。


 夢中に作業を進める男の傍らの床には――


  切

   断

    さ

     れ

      た

   女

    性

     の

  

   が

    転

     が

      る


 コツコツ……。

 コツコツ……、コツコツ。




     了

 【第五奇譚:「騒霊は屈折する/The poltergeist is refracted」】


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