騒霊は屈折する:第6話 マンション


 香住が買い物から帰ってきたとき、丁度エレベータが閉まりかけていた。彼女は急いでパネルの昇りボタンを押した。

 すると再びドアが開き、香住は、ほっとしてエレベータに乗り込んだ。


 エレベータの中には、先客が乗っていた。

香住に気づくと直に後ろを向いたので、顔ははっきりと認識できないが、香住がこのマンションに入居して始めて出合う人のようだ。


 ――マンションの住人の知人か、関係者だろうか……?


 と考えながらも、取り敢えず香住は、その男性に軽く会釈をして、三階のボタンを押そうとしたが……、

 既に三階のランプは点灯していた。


 ――三階?


 三階の住人なら、たいてい顔を合わせたことがあるはずなのだが……、やはり何処かの部屋の関係者なのか?


 男は、大きなキャリーバッグの把手を握りしめ、ただ黙って後ろを向いたままだ。

 重苦しい沈黙を乗せたまま、エレベータはゆっくりと上昇して三階に止まった。

 しかし、男は三階では降りず、香住だけが降りた。


 ――どうして……?


 ドアが閉まる直前、その男がゆっくりと振り返って、香住の顔を一瞥したように見えた。


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